# 窓の魚
2008.07.16 Wednesday

窓の魚
西 加奈子
JUGEMテーマ:小説全般
●窓の魚/西加奈子
●新潮社
●1260円
●評価 ☆☆☆
紅葉にはまだ早い深い緑の季節に2組のカップルが温泉へ向う。
でも、裸になっても笑いあっていても、決して交わらない想い。
恋人たちの一夜を美しく残酷に描く、西加奈子の新境地。
(感想)
これまでの西加奈子作品のイメージとは異なり、
しっとりと、ひっそりとしている。
アキオ・ナツ、トウヤマ・ハルナの二組のカップルが訪れたのは
古めかしいが、広く立派なある温泉宿。
この旅の中での4人の想いを4人それぞれ描いています。
一緒に来たというのに誰一人、心から楽しんでいる者はなく、
お互いのパートナーとさえ心はバラバラ、違う方向を見ている。
楽しいはずの時間なのに、孤独で秘密に満ちている。
誰かとつながりたい、でも自分を孤独にしている薄暗い部分がそれを許さない・・・。
翌日、宿で発覚した事件が微妙に絡まり、
はたして彼らはそれに関係しているのかどうか明確な答えがない分、
読者の想像を激しく刺激します。
読み進めるうちに意外な展開に・・・。
まさか、こういう方向に話が転がっていくとは思いませんでした。
少々、タイクツだし救いはないけど、
ユラユラと漂うような孤独と葛藤が妙に心地よい不思議な作品でした。