# 7月24日通り
2007.04.09 Monday
7月24日通り
吉田 修一
●7月24日通り/吉田修一
●新潮社
●1365円
●評価 ☆☆☆☆
退屈でしかたのなかった朝のバス通勤を何となく楽しめるようになったのは、
まだ行ったこともないポルトガルのリスボンという街の地形が、
自分の住む地方都市とどこか似ていると発見したから。
「丸山神社」を「ジェロニモス修道院」、
「水辺の公園」を「コメルシオ広場」などと言い換えて楽しみ、
夢見るOL・本田小百合。
“間違える”のが不安で、平凡な選択ばかりしてきた私でも
一度くらいはドラマみたいな恋をしてみたい・・・。
間違ってもいいから、この恋を選ぶ。
そう思ったこと、思いたかったこと・・・ありませんか??
(感想)
各章のタイトルが
「モテる男が好き!」
「イヤな女にはなりたくない」
「どちらかといえば聞き役」
「家族関係は良好」
「初体験は19歳」
「タイミングが悪い」
「ときどき少女漫画を読む」
「夜のバスが好き」
「アウトドアは苦手」
「間違えたくない」と○×方式の自己分析になっています。
これは主人公の弟の恋人が自分がどんな女なのか分析して、
モテない理由を突き止めようとした場面で出てきた10個のキーワード。
あなたは何個あてはまりましたか?(私は6個)
平凡な女は恋愛で冒険をすることができない。
なぜなら、それは「間違える」ことを極端に恐れているから。
主人公の小百合もそんな夢を見ているだけの女の子なんだけど、
あることをきっかけに勝負に出ようとします。
これは彼女がそう決意するまでの物語です。
私もどちらかとこのタイプなので、生々しく共感できました。
特に高校時代の彼女に告白してきた男子が、
女子の話題の端にものぼることもない地味な男子であったことに傷つき、
「私はああいう男の子に選ばれるような女なんだ」と思ってしまうところなんか
悲しいくらいに理解できてしまった。
そして一度も情熱的な恋をしたことのない女に、
そういう恋に走ろうとしている人を止める権利はないなんて思っちゃうあたりも
自分の平凡さは自分がいちばん理解してるんですよ。
でもそれを認めたく自分も確実に存在する。
そのへんのモヤモヤがわかりすぎるほどわかる。
そして、自分の誇りであったイケメンの弟が、
自分ん似たタイプの平凡な女を選ぼうとしていることに対する、
激しい反対もわかる
自分の住む街をリスボンだと思いこもうとしているという主人公の設定も、
彼女の性格を表現するのに、うまい設定だと思いました
「もっと幸せになれたはずなのに・・・」と小さな後悔を抱えている
女の子たちに読んでほしい本です。
かわいいお話でした。
(でも私は、この主人公があの日、電車に飛び込まなくても
もう一つの出会いが実り、幸せになれたような気がするのですが・・・。
ダメ?私のそんなとこが臆病だってこと?)