# 海
2007.01.15 Monday

海
小川 洋子
●海/小川洋子
●新潮社
●1365円
●評価 ☆☆☆
キリンはどんなふうに眠るのだろう。
昨日までは知らなかった誰かと触れ合い、
思い出や秘密を共有することの美しさの不思議・・・。
「博士の愛した数式」の前後に書かれた美しくも深い
7つの短編集。
(感想)
7つのうち、「銀色のかぎ針」と「缶入りドロップ」は
それぞれ3〜4ページ程度の短いお話です。
すべての話に共通するのは、
主人公が昨日までは知らなかった誰かと出会い、
その人の触れ合うことによって、
大切な思い出であったり、時間であったりを共有すること。
小川洋子さん独特のつかみどころのない、
空中を浮遊するような不思議なお話ばかり

描写も美しく、じっくりどっぷり世界観に浸れます。
いちばん素敵だったのは「バタフライ和文タイプ事務所」。
硬質に、間接的に、性を描いた作品。
ただタイプを打つ音だけが鳴り響く静けさと、
タイプを打ち指先の動き。
「性」と「静」の美しさ、
大人じゃないとわからないいやらしさがあるっっ

でも、それが下品じゃなくすごく上品なの。
むしろ、とっても美しい

表題作の「海」に漂う不思議な空気も好き。
小さな弟はこの世でただ一人、「メイリンキン」という楽器の演奏者。
その音色がどんなものなのか想像し、
しばし夢心地に浸れるような味わい深い作品でした。