# 朝が来る
2016.02.09 Tuesday
JUGEMテーマ:小説全般
朝が来る / 辻村深月(文藝春秋)
評価 ☆☆☆☆☆
「子どもを、返してほしいんです」
親子三人で穏やかに暮らす栗原家に、ある朝かかってきた一本の電話。
電話口の女が口にした「片倉ひかり」は、
だが、確かに息子の産みの母の名だった…。
子を産めなかった者、子を手放さなければならなかった者、
両者の葛藤と人生を丹念に描いた、感動長篇。
(感想)
私も佐都子たちと同世代、結婚はしていますが子供はおりません。
強く強く子供を求めていたわけでもなく、自然に状況を受け止めていますが、
やはり周囲の言葉で心が乱されたりすることはあるので、
自分の身に置き換えて考えさせられることの多い作品でした。
彼女たちが子供を求め、努力し、家族を作っていく姿には
人前で読んでいたにもかかわらずウルッとくるものがありました。
「血のつながり = 家族」なのではなく、
「実の親子であっても、家族というのは喧嘩のような話し合いを繰り返してぶつかり合い、努力して築くもの」
佐都子のこの考えに大賛成。
血よりも何よりも、大事なのは共に過ごした時間と築き上げてきた信頼です。
「朝が来た」というタイトル、
はじめのうちは佐都子たち夫婦に子供が来たことを意味してるのかと思いましたが、
最後まで読んでみるとどうやら違うようです。
この人たちにどんな未来が待っているのかの判断は読者の想像に任せるようなラストでしたが、
私には柔らかい光のさす、あたたかな始まりの光景にうつりました。
「子を産めなかった者」「子を手放さなければならなかった者」・・・・
どちらの視点からも描いているので、
どちらの年代の方も感情移入して読める作品だと思います。