# 伊藤くん A to E
2015.09.12 Saturday
JUGEMテーマ:小説全般
伊藤くん A to E / 柚木麻子(幻冬舎)
評価 ☆☆☆
伊藤に長い間片思いするが、粗末に扱われ続けるデパート勤務の美人。
伊藤からストーカーまがいの好意を持たれる、バイトに身の入らないフリーター。
伊藤の童貞を奪う、男を切らしたことのないデパ地下ケーキ店の副店長。
処女は重いと伊藤にふられ、自暴自棄になって初体験を済ませようとする大学職員。
伊藤が熱心に通いつめる勉強会を開く、すでに売れなくなった33歳の脚本家。
こんな男のどこがいいのか。5人の女性を振り回す、伊藤誠二郎。
ほろ苦く痛がゆい成長小説。
(感想)
いくらイケメンだからって、何なんだ!? この伊藤って男はww
こんなのに振り回される女の子達が気の毒でなりません。
彼女達はそんなダメな伊藤くんを反面教師として何かを学び取り、
最終的には5人とも伊藤くんから去っていきます。
伊藤くんのダメっぷりが凄すぎて、女の子達にはついつい同情しちゃうけど、
だけど!!この女達の嫉妬心などの心理もなかなかにドロドロしていて、
このへんがあの「ナイルパーチの女子会」を書いた柚木麻子らしいな〜〜と。
都合のいいことにボンボンで顔がいい。
それをうまく利用して、傷つくことや困難なこと、
言ってしまえば人生そのものから逃げている伊藤くん。
「あなたたちのしんどいレースに参加するつもりはない」
「世の中でいちばん大事なのは、誰からも傷つけられないこと」・・・・。
伊藤くんが腹の中の思いをぶちまけた時、心底かっこ悪いと思った。
(だからこそ、最終的にクズケンがいい男に見えてくる!)
見てるだけなら面白いけど、絶対にかかわりたくないな、こんなヤツ。
他の人のレビューを読むとEの評価が低いようだけど、
恋愛はまったく関係のない視点で描いているのはEだけだし、
これによって恋愛問題だけでなく、人としての伊藤くんの底の浅さが深く描かれてる。
私はEもこれはこれで必要な章だったのではないかと思います。