# アタラクシア
2019.09.18 Wednesday
JUGEMテーマ:小説全般
アタラクシア / 金原ひとみ(集英社)
個人的な評価 ☆☆☆
擦り切れた愛。暴力の気配。果てのない仕事。そして、新たな恋。
ままならない結婚生活に救いを求めてもがく男と女―。
芥川賞から15年。危険で圧倒的な金原ひとみの最新長編。
(感想)
ここに出てくるひとたちは不倫したり、暴力や言葉で誰かを傷つけたり、
それぞれ人には言えないような秘密を持っています。
それは決して許されることではないのに、
自分の中でごまかしたり、人のせいにしたり、
みんな自分をなんとか正当化しようとしている。
そんな満ち足りなさが痛々しい物語でした。
タイトルの「アタラクシア」は聞きなれない言葉ですが、
「心が他のものに乱されない、平静な状態」という意味だそうです。
なんだかこの作品にまったく似合ってないタイトルだけど・・・・
これは平静や安定を求めてもがいてる人たちの物語だと解釈すれば、
まぁぴったりなタイトルとも言えるのかもな?
最後の最後でびっくりどかーん!
まさかこういう繋がりがあったとは・・・。
各章で語り手の変わるスタイルだったけど、
最後の最後でやらかしたあの人に語らせる章がなかったというのには大きな意味がありそう。
この人が語る章があったら、もっと重たい作品になっていたはず。
誰にも共感できません。
だけど、やっぱり金原ひとみさんは文章が本当にうまくて、
だからこそ心理の描写などが手に取るようにヒリヒリと伝わってきました。