# 夜行
2017.12.04 Monday
JUGEMテーマ:小説全般
夜行 / 森見登美彦(小学館)
個人的な評価 ☆☆☆
私たち六人は、京都で学生時代を過ごした仲間だった。
十年前、鞍馬の火祭りを訪れた私たちの前から、
長谷川さんは突然姿を消した。
十年ぶりに鞍馬に集まったのは、
おそらく皆、もう一度彼女に会いたかったからだ。
夜が更けるなか、それぞれが旅先で出会った不思議な体験を語り出す。
私たちは全員、
岸田道生という画家が描いた「夜行」という絵と出会っていた。
旅の夜の怪談に、青春小説、ファンタジーの要素を織り込んだ傑作。
(感想)
森見さんの作品は日本(京都)らしい和のテイストでありながらも、
煌びやかでPOPできらきらはめちゃめちゃ楽しい印象です。
ですが今回は180度違って、漆黒の闇を思わせるダークで怪しげな作品。
ゆるめのホラーといっても言ってもいいでしょう。
今までとはまったく違う世界観に驚かされました。
昔の仲間が久しぶりに集まり、
それぞれが体験した不思議な出来事を語る・・・という流れなのだけど、
最後のオチには圧巻だったわりに、
仲間たちの語る不思議体験の部分はおさまりが悪くもやもやが残ります。
雰囲気はいいのに、
もっと味わい深い余韻が残るような読後感にはできなかったのでしょうか。
物語のキーとなるのは「夜行」「曙光」という2つの銅版画の作品群。
この小説のタイトルが「夜行」であるならば、
この作品の対となる作品という立ち位置で、
もう一つの世界を描いた「曙光」という作品も書けばいいのに。
てか、「曙光」という作品がないのが不思議なくらいなのですが・・・。