# 母の待つ里 / 浅田次郎
2023.01.24 Tuesday
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JUGEMテーマ:小説全般
● 母の待つ里 / 浅田次郎(新潮社)
● 個人的な評価 ☆☆☆☆
庭も故郷も持たない人々の元に舞い込んだ〈理想のふるさと〉への招待。
半信半疑で向かった先には奇跡の出会いが待っていた。
雪のように降り積もる感動、全く新しい家族小説にして永遠の名作誕生!
(感想)
富裕層が高額で「疑似ふるさと」を体験するという驚くべきストーリー。
実家の両親のすぐそばに暮らしている地方在住の私には考えられないお金の使い方ですが、
すでに両親を亡くし、田舎を持たない富裕層にとっては魅力的なサービスなのかもしれません。
彼らのような成功者であっても、心のどこかには満たされない寂しさがあり、
その一方で、若者が都会へ出て過疎化が進み、
これといった産業もない地域でこのようなサービスに従事する村人がいることにも物悲しさを覚えます。
しかしたとえ嘘のふるさとであっても、
ここを訪れた人が感じたなつかしさと母のあたたかさは本物。
そしてちよさんが彼らから受け取った愛も本物。
最後は悲しいけど、心温まるお話でした。
四季折々の美しさや日本の原風景は、そこに思い出のない人の心にも刺さる。
それは日本に生まれて誇らしいと思えることのひとつです。
このような風景は絶やさずに残していかなければならないと改めて実感しています。