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評価:
江國 香織
小学館
¥ 1,680
(2011-09-28)
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金米糖の降るところ / 江國香織 (小学館)
評価 ☆☆☆
ブエノスアイレス近郊の日系コロニアで育った佐和子とミカエラの姉妹は、
少女の頃からボーイフレンドを<共有すること>をルールにしていた。
留学のため来日した二人だったが、誰からも好かれる笑顔の男、達哉と知り合う。
達哉は佐和子との交際を望み、彼女は初めて姉妹のルールを破り、
達哉と結婚する・・・。
しかし20年後、佐和子が達哉に離婚届を置いて、
年下の男性とともにアルゼンチンに戻ってきて・・・・。
江國さんの文体、描写の繊細さが大好きです。
あえて書かなくてもいいようなことを書くことで、
さりげなく物語の世界を広げている。
自分の想像力では想像できないような細かな美しい部分まで、
どっぷりと世界に浸れます。
淡々と読み進めることができたけれど、
アジェレンの純粋な恋心以外にはまったく共感ができなかった。
不倫の恋ではあるけれど、
ここに出てくる人たちの中でちゃんと素直にまっすぐ恋をしていたのは
おそらくアジェレンだけ。
ミカエラなんて「人の所有物は欲しい!」と思うようなそんな女にしか見えないし、
達哉への執念だって、佐和子が彼と結婚したからでしょ。怖い人。
でもこんなに共感できないのに、それでも引き込まれちゃうのはさすが。
やっぱり、江國さんの文章の「読ませる力」なのかなぁ。
姉妹の<ルール>。怖い姉妹。
だけどそれってつまり、
誰にも渡したくないほどに激しく愛した男性はいなかったってことでしょ?
佐和子にとって唯一のそれが達哉だったのかもしれないけど、
これ以上愛するのがつらいから好きじゃない男の人を選ぶって理解できない。
たぶちん、全然魅力ないしそのへんに疑問が残る。
私が子供すぎるのかなぁ・・・。
それにしても達哉が帰国し、
所沢の自宅で門を開けた瞬間に目にしたもののシュールさは強烈だった。
ちょっと忘れられないシーンになりそう。
佐和子の選択の不可解さがこの作品の肝なのだろうけど、
私はどうせならもっと胸を締め付けられるように切ない恋愛小説が好き。
私には到底理解のできない世界だった。