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JUGEMテーマ:小説全般
● タラント / 角田光代(中央公論新社)
● 個人的な評価 ☆☆☆☆☆
こんな人生に、使命は宿るのか。
片足の祖父、不登校の甥、大切な人を失ったみのり。
絶望に慣れた毎日が、一通の手紙から動き出す。
慟哭と感動の傑作長篇。
(感想)
「正義感」で過ちを犯し、のんべんだらりとした人生を送る主人公・みのり。
学校に行かなくなった甥の陸。
寡黙で心に蓋をしたような祖父・清美。
あきらめたような人生を送る彼らに小さな光の灯る物語です。
やりがいを見つけ、有意義な人生を送る人がいる一方で、
誰もが進んではやりたがらないような職業につき、平坦な日々を送る人もいる。
でも、そういう人がいれくれるからこそ社会は回っている。
彼らの人生に意義がないなんてまったく思わないけど、
でも実際のところ、「生きがい」「やりがい」みたいな
生きる意味的な物を得たいと思うのが人間の性だと思う。
題名の「タラント」とは、
聖書に出てくる言葉で、才能や使命などを意味します。
人より秀でた得意なことがないと「自分にはなんの才能がない」と悲観し、
才能に恵まれた人を羨むこともあるかもしれない。
でも、そういういわゆる「目立つ特技」があることだけが才能じゃないと気づかされました。
人の影になり地道にコツコツ活動することも、
良くない状況の時も荒ぶらずに冷静で穏やかにいられる精神力をもっていることも
十分に「才能」と言える。
人は嫌がるけど、私は特に苦に感じずに楽しめること・・・
そんなことを一つでも見つけたら人生もう大成功なのかもしれないな。
私もまだ「自分のタラント」を見つけてはいないです。
でも、きっと何かあるはず。
もうちょっと視野を広げてみようかな、
好きなことを突き詰めてみようかな・・・と背中を押された気がしました。
角田さんの小説はほとんど読んでいるけど、
これは今までにないほど魂の揺さぶられる大作でした。
ほんとに大きな作家になられて、古いファンとしてなぜか私まで誇らしい気持ちですw