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月の満ち欠け / 佐藤正午(岩波書店)
個人的な評価 ☆☆☆☆☆
目の前にいる、この七歳の娘が、いまは亡き我が子だというのか?
三人の男と一人の少女の、三十余年におよぶ人生。
その過ぎし日々が交錯し、幾重にも織り込まれてゆく。
この数奇なる愛の軌跡よ!
さまよえる魂の物語は、戦慄と落涙、衝撃のラストへ。
(感想)
2017年上半期、いちばん面白かった本は間違いなくこれです。
最近にないくらいのめり込みました。
人間関係が複雑なので、
これから読む人は人物相関図を作りながら読むのをおすすめします。
大好きだった人に再会するために何度も生まれ変わりを繰り返して、
彼と接触を試みようとする女性とその周囲の人々の話です。
だけど時の流れは残酷なもので、
彼女が何度かの生まれ変わりを繰り返している間、
彼はどんどんおじさんになっていく・・・。
結果、少女がおじさんを心と体で求めてるような感じになってしまい、
そのへんに生理的な不快感を感じる人もいるかもしれません。
何度生まれ変わってもあなたを求めてる・・・これを女の執念ととるか、
純愛ととるかでも賛否は大いにわかれそうです。
ある登場人物が自分達の身近に起こったこの生まれ変わりらしき現象に対し、
「生まれ変わりが絶対にあると信じろと主張してるわけではないのです。
ただ生まれ変わりなどそれまで考えもしなかった人に、
そういう考え方も一理あるということをわかってほしい」
というようなことを語るシーンがありますが、
これは世の中のどんなことにも当てはまります。
ちょっと作者の伝えたいメッセージとはかけ離れた感想になってしまうかもしれませんが、
自分の中の常識だけにとらわれず、
「こんなこともある」「こんな人もいる」と受け入れられる柔軟さ。
こういう柔らかな目で物事を見ることのできる人になりたいと思いました。