隣り近所のココロ・読書編

本の虫・ともみの読書記録です。
<< March 2024 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
# 冬の光
評価:
篠田 節子
文藝春秋
¥ 1,782
(2015-11-11)

JUGEMテーマ:小説全般

 

 冬の光 / 篠田節子(文藝春秋)

 

 評価 ☆☆☆

 

四国遍路を終えた帰路、冬の海に消えた父。

企業戦士として家庭人として恵まれた人生、のはずだったが…。

死の間際、父の胸に去来したのは、二十年間、愛し続けた女性のことか、それとも?

足跡を辿った次女が見た冬の光とは―

 

 

(感想)

 

四国巡礼の旅に出るが「結願」の帰途、冬の海に身を投げて自死した父・康宏。

父の足跡を追い、父の死の謎を解き明かそうとする次女・碧。

それぞれの視点から真実を描いていくスタイルの作品です。

 

何を思い、どう生きるかなんて自分自身のことですらよくわからない人がほとんどなのに、

自分以外の誰かのそれを100%理解するなんて不可能。

康宏目線で考えれば彼の人生を許す気になれなくもないが、

康弘の心の内は妻や長女に届くことはなく、

彼女ら目線で見れば「最低な夫(父)」以外の何者でもない。

・・・やはり気持ちは届けなきゃ意味がないと痛感。

 

 

| comments(0) | trackbacks(0) | 15:17 | category:    篠田節子 |
# ミストレス
評価:
篠田 節子
光文社
¥ 1,680
(2013-08-13)

 ミストレス / 篠田節子(光文社)


 評価 ☆☆☆☆



麻酔医の貴之は、妻と一緒に行ったコンサートで眠気に襲われ、不思議な夢を見る。

それは悲しみをたたえながら演奏する女性の姿だった。

夢のことが頭から離れず、彼女の手掛かりを求めるうちに意外な事実を知る。

見慣れた世界が反転する、女性の愛のさまざまな形を描いた短編集。



大人の短編集という印象。

5編のうち4編は「小説宝石」の官能特集に寄稿したものと書いてあったけど、

私には官能小説という風には感じられなかったなぁ。官能小説ではないです、これ。


どのお話も男性が女性に翻弄される。

感情移入できるような作品群ではなかったけど、

とにかく気になるのは男性の身勝手さ。

そして女は男の知らない別の顔を持っている。魔性性のある女性が多かった。


「宮木」の旦那なんて自分勝手もいいとこ。

おまえが悪いんだろ!ばか!と言ってやりたい。


いちばん印象深かったのは「紅い蕎麦の実」。

若い女性が「あのおばさんにはかなわない」と感じたその気持ち・・・。

これ、想像するだけで痛かった。私も若いころ、そんな経験あったな。

若さだけじゃ、かなわないものってあるんだよね。

会話の中で出てきた

あと、“女は尊敬されたらおしまい”という部分に軽くショックを受けました。

最近、ある男性に言われたのです。「とても尊敬している」、と。

私、終わってるんですねww

 

| comments(0) | trackbacks(0) | 13:39 | category:    篠田節子 |
# 薄暮
評価:
篠田 節子
日本経済新聞出版社
¥ 1,890
(2009-07-01)
コメント:地味ながらも読ませる力作

JUGEMテーマ:小説全般
 ● 薄暮 / 篠田節子
 ● 日本経済新聞出版社
 ● 1890円
 ● 評価 ☆☆☆☆
田舎のほぼ無名に近い亡き画家の封印されていた一枚の絵
それが雑誌に取り上げられたことで「閉じられた天才画家」は妻の手を離れ、
郷土の人々の欲望と疑心の渦に巻き込まれる。
著者の新境地を示す傑作長編。
 


(感想)

地味でずっしりと重い。
ずーっと嫌な気持ちで読んでいなければならないくらい、人の感情の醜い部分を描いている。
でも読ませる力のある不思議な作品。
小説としては退屈なかんじではあるんですよ。
あくまで人間ドラマで、ミステリーではないんだけど、
どこに真実があるのか早く知りたくて、
ミステリーを読んでいるときのような中毒症状に襲われて読む手が止まりませんでした
退屈なのに、どうしてこんなに読ませるんだろう・・・
なんだかこういう作品こそ長く記憶に残るような気がします。

すでに亡くなっている田舎の無名画家に急にスポットが当てられたことから起こる騒動。
画家の才能を強く信じてきた妻。
絵を購入し、支援もしてきた郷土の支援者たち・・・。
それぞれの思惑が交錯し、とんでもない方向へ転がっていく様を
巻き込まれた雑誌編集者の目を通して描いています。

人間同士の愛情はもちろんのこと、
宗教観・郷土愛・芸術愛・・・さまざまな形の感情が描かれている。
しかもそれは激しくもあり、醜くもあり、欲や嫉妬にまみれながらもリアル。
このへんの丁寧なうまさはさすが篠田さんと言わざるを得ません。

自分の認めたものを信じ抜き、守り抜こうとする自我の薄気味悪さ。
こういう感情って自分の中におさめておけばいいのだけど、
外に出すと危険なものにもなることがありますよね。

人々の醜い感情にまみれながらの唯一の救いは、
新潟ののどかで美しい風景を想像すると癒されることでした。
| comments(0) | trackbacks(0) | 10:50 | category:    篠田節子 |
# 夜のジンファンデル
夜のジンファンデル
夜のジンファンデル
篠田 節子
JUGEMテーマ:読書

夜のジンファンデル/篠田節子
集英社
1575円
評価 ☆☆☆
友人の夫と過ごした危うい一夜月
形にならなかった恋の記憶が今夜二人の胸に甦る…表題作他、
郊外の団地ビルに引っ越した一家。
新しい環境に馴染もうと奮闘する夫妻が
行き着いた究極の家族の形とは(『コミュニティ』)。
日常にそっと入り込む不思議な出来事と奇妙な体験を描く短編集。



(感想)
表題作の「夜のジンファンデル」は
人気女性作家が勢ぞろいした短編集読書「恋愛小説」に収録されていた作品です。
この一編だけは再読ですが、他ははじめて読みました。
表題作だけが他と異色のような気がしますが、
全体的にはホラーとカテゴライズしてもいいような怖さ。
大人の雰囲気も香るブラックな味わいの短編集です。

「恨み祓い師」は背筋のうすら寒くなるような作品。
恨みを糧にして生きる・・・。
恨みってある意味ものすごく強大なパワーでもある。
言葉で言い表せないほどの重みがありました。

「絆」は最後の一文にすべてが凝縮され、
「永久保存」は一歩間違えればブラックコメディになってしまいそう。

でも、やはりいちばん不気味だったのは「コミュニティ」。
新しく団地ビルに引っ越してきた家族が、
その団地の行き過ぎた家族意識と
コミュニケーションの渦に飲み込まれていく様子を描いています。
団地って同じような経済状態の人たちが集まるので、
上手に付き合えばとても頼りになる関係を築けるものなのかもしれないけど、
コンプレックスの共有からうまれる仲間意識は不健康であり、
負のものしか生み出さないものなのかもしれない。
怖さと気味の悪さが共存に嫌悪感を覚え、後味が悪いたらーっ
でも、このうまさには脱帽です。

ひとつのジャンルの中で描かれているのに、
どれもまったく別の味わいがあり、読み応えのある短編でした。

| comments(0) | trackbacks(0) | 15:39 | category:    篠田節子 |
# 砂漠の船
砂漠の船
砂漠の船
篠田 節子
砂漠の船/篠田節子
双葉社
1680円
評価 ☆☆☆
ばらばらだ・・・。
何もかも終わった・・・。
幹郎は父と母が出稼ぎ労働者であった淋しい家庭に育ったが故に、
家族が一緒に暮らす平凡な家庭をつくることを第一に生きてきたが……。
細密画のように描くひび割れた家族の肖像。


(感想)
父親、母親、娘・・・それぞれの感情が理解しやすい話でした。
なんだかみんなの愚痴を聞いて、
みんなに平等に「それはひどいね〜ひやひや」と
心の底から同情してあげられそう。

いろんな視点から見つめてみることで、
作品がより奥深く感じられます。

父親だけが「あたたかく何でも話し合える理想的な家庭」にこだわっている。
それが空回りだから家族はどんどん離れていく。
そもそもこういう家庭は意識して作るものではないんだけどなーたらーっ

父親の願いはわかります。
でも正直、押し付けられてこれほど苦痛なものもない。
理想の形にこだわりすぎて、
娘の将来を冷静に見られなくなっている父親の姿には危険なものすら感じました。
理想的な道へすすませてあげるのが愛情ではなく、
好きな道に真剣にすすもうとしている娘を
誰よりもたくさん応援してあげるのが家族ですよねー。

きっと、これとおなじ「ミス」を犯している親は
世の中にたくさんいますよ。

さらに「自分自身と地域」ということについても考えさせられます。
何もトラブルもなく仲良くしていれば門題はないけれど、
地域とはひとつでもミスを犯すとぞっとするほど寒々しい集団と化す・・・。
その地域にあった住み方やお付き合いの仕方って
ほんとに重要だと痛感しました。

地域に属し、平凡な生き方をしている私にとって
見過ごすことのできないテーマを描いた作品でした。

●この本を好きな人におすすめなのは・・・
家族疲れ/小笠原紘子
| comments(2) | trackbacks(0) | 11:45 | category:    篠田節子 |
# 秋の花火
秋の花火
秋の花火
篠田 節子
秋の花火/篠田節子
文藝春秋
1700円
評価 ☆☆☆
人生の盛夏をすぎた頃に見えてくるもの
人生の秋もみじの頃の恋情は、静かではかない花火のよう。
生きることの痛みと意味を繊細に大胆に描いた待望の作品集。

(感想)
5編のお話からなる短編集ですが、
5つすべてがまったく違うジャンルのお話なので
篠田さんの幅の広さを実感させられました拍手

なかでも私は「観覧車」が好き。
もてない男女の恋愛を描いたものですが、
それぞれのどうしようもない痛みが伝わってきて切なかったです。

「戦争の鴨たち」もラストは思いっきり笑わせてもらいました楽しい
このタイトルの≪毒≫も効いてますね(笑)

表題作の「秋の花火」は女性には生理的にきついかもしれません。
正直、私は読んでいて不快な場面も多かったです。

とにかくいろんな境遇の人々を描いた作品集なので、
誰でもどれかひとつは感情移入しやすい作品に出会えるのではないでしょうか?
| comments(2) | trackbacks(0) | 15:35 | category:    篠田節子 |
# 百年の恋
百年の恋
百年の恋
篠田 節子
百年の恋/篠田節子
朝日新聞社
1575円
評価 ☆☆☆☆
梨香子は33歳のエリート銀行員。
才色兼備の彼女がある日、
年収200万円のオタクなライター真一となぜか恋ハート大小におちた!?
結婚指輪・出産赤ちゃん・育児子供
少子高齢化時代の男女がくりひろげる、てんやわんやの結婚物語。

(感想)
奥さんが不潔でわがままで・・・というのは
作品を面白くするためのエッセンスにすぎない。
テンポのいい面白い作品ではあるけれど、
この本の本来の主題は現代の若い夫婦が抱えてるであろう
結婚から子育てに至るまでの問題の方だと思います。

今、社会ではお給料や仕事の内容に男女の差別をなくそうという動きが強まっています。
ある点ではそれはそうかもしれない。
けど、別の方向を見たらそうとも言い切れないと思うんです。
男女の差・・・どこを残してどこを切り開いていくか、
これをうまく見極めるのが夫婦円満の秘訣なのかもなぁ。

けど、ひどいなー、この嫁モゴモゴ
完璧な人間なんていないのはわかっているけど、
嫁、母として以前にこの不潔さとわがままぶりは人としてマズい。
コメディ小説としてはおもしろく読めたけど、
これが現実だったらと思うとぞっとしました。汗

●この本を好きな人におすすめなのは・・・
家族善哉/島村洋子
| comments(0) | trackbacks(0) | 00:27 | category:    篠田節子 |
# 女たちのジハード
女たちのジハード
女たちのジハード
篠田 節子
女たちのジハード/篠田節子
集英社
2090円
評価 ☆☆☆☆☆
保険会社に勤める異なるタイプの5人のOL。
彼女達は厳しい男性社会の中、
仕事や結婚に迷いながらもたくましく自身の幸せを切り開いていく。
現代OL道を生き生きと描く、第117回直木賞受賞作。

(感想)
とてもおもしろかったです嬉しい
テーマが身近なので同性として希望がわき、
共感できる部分の多い作品でした。

自分の家家がほしい・お金持ち王冠と結婚したい・キャリアがほしい・・・
これらは誰もがあこがれること。
だけど結局、大多数の人はどこかで妥協し、平凡な人生を送る。
この本の登場人物たちが素敵なのは、
自分の憧れていたものが100パーセントは実現していないんだけど、
でもそれぞれのやり方で自分の人生をきちんと切り開いたとこ・・・かなニコニコ

特に康子さんの成長は私たちに勇気を与えてくれました。

すべての女性に希望を与えてくれる本だと思いますラブ
| comments(0) | trackbacks(0) | 00:15 | category:    篠田節子 |
Selected Entry
Categories
Archives
Profile
Comments
Trackback
Mobile
qrcode
にほんブログ村
にほんブログ村 本ブログへ にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
Search this site
Sponsored Links