光のない海 / 白石一文(集英社)
評価 ☆☆☆
建材会社の社長を務める高梨修一郎。
50歳を過ぎ、心に浮かぶのは過去の秘密と忘れがたい運命の人・・・・・・。
個人と社会の狭間にある孤独を緻密に描き、
成熟した大人に人生の意味を問う長編小説。
(感想)
人生の意味や運命に関する物語であるという点に関しては、
いつもと変わらないブレない白石一文であると思う。
だけど今回は主人公が男性ということもあり、いかにも男性的な話で、
主人公よりも若い世代の女である私にはほんの少し重厚すぎるように感じました。
個人的にはもう少し「運命」や「恋愛」の要素を含んだ白石作品の方が好みです。
深く心に残りそうな一文がありました。
それは・・・
どんな人間のいのちも、それ一つでは立っていられないのかもしれない。
私たち一個一個のいのちは、別の一個一個のいのちによって支えられて
初めていのちとして存在していくことができるのかもしれない。・・・という部分です。
最後に主人公に「社長さーん」と呼びかけているのは、もちろんあの人ですよね?
安易な展開に落ち着いちゃうのかもしれないけど、
主人公を支えるのはあの人であると私は信じたい。
そうであれば、この重苦しい物語にも一筋の光が見えますもんねっ。