隣り近所のココロ・読書編

本の虫・ともみの読書記録です。
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# 醒めながら見る夢
評価:
辻 仁成
KADOKAWA/角川書店
¥ 1,728
(2014-04-11)

JUGEMテーマ:小説全般

 

 醒めながら見る夢 / 辻仁成(角川書店)

 

 評価 ☆☆☆

 

華道の家元後継者として厳しく育てられた姉妹・亜紀と陽菜は、

演出家の優児をめぐって三角関係に陥りながら、

自らの心のありようを模索する。

答えの無い不条理な世界で、行き場を失った愛はどこへ向かうのか――

 

 

 

(感想)

 

「人間の心ってどこにあるんだろう」

 

・・・人間にとっての永遠のテーマといっても過言ではない難問を投げかける今作。

心とはなにか、自分のとはなにかという問題と格闘しながら生きる男女。

後半は意外な方向へいったものの、最後までブレのない軸のある作品でした。

身体的にゾクゾクするような耽美な美しさも感じます。

亜紀の話し方だけが妙に浮いていた気もするけど、

全体的な雰囲気は舞台である京都の静かな美しさとマッチして、

なんともいえない妖しい色気もある作品でしたね〜。

 

人間の心は「頭」にあるのか、「胸」にあるのか。

それをどうとらえているかによって愛し方・生き方も違ってくるでしょう。

永遠にわかりあえない苦しみも生まれるでしょう。

どの登場人物も感情をさらけ出しているように見えて実はそこまで深い部分は見せてはいない。

そのへんが彼らの誰一人として満たされていない要因なのだと思う。

心って本当に扱いが難しい!

| comments(0) | trackbacks(0) | 14:15 | category:    辻仁成 |
# 右岸

評価:
辻仁成
集英社
¥ 1,785
(2008-10-11)
コメント:「左岸」と対になる物語
JUGEMテーマ:小説全般
●右岸/辻仁成
● 集英社
●1785円
●評価 ☆☆☆
福岡で隣同士に住んでいた九と茉莉。
不思議な力を授かりながらも、その力で人を救うことができず苦しむ九。
放浪の後、パリで最愛の女性・ネネに出会うが、いつも心の片隅には茉莉がいて・・・。
江國香織と辻仁成の奏でる二重奏ふたたび。
信頼し合い、尊敬し合う作家同士だから実現した、柔らかな幸せの物語。



(感想)
江國さんの「左岸」と対になる物語です。
この本を読んだブロガーさんの感想を読んでいると、
“「左岸」から読んだ方がいい”という意見が圧倒的に多く、
その順番で読ませてもらったんだけど、
2冊読んでみると確かにその順序でないとキツイかも?と思います。

「左岸」は波乱万丈の女性の人生を描き、同性からの共感も得やすいでだろうけど、
「右岸」は主人公が超能力を持っているという設定のためか
取り方によってはオカルトチックな作品と思われても仕方のない内容。
「右」を最初に読むと引いちゃう人もいそう
超能力があることによって普通の生活ができず、九には次々と不幸が襲ってくる。
その生きにくさが精神世界っぽい事柄にもつながってくる。
いつもならスピリチュアルなものってスーッと心にしみ込んでくるはずなんだけど、
どうも自然じゃなくて、うまく入り込めなかった。

で、九の一生は性とは切り離せないようでHシーンがやたらに多い。
どうしたって何度も何度もそこに戻るんだもん
官能的で美しい描写でもなく、そのへんにも女性は引くでしょう。

九の初恋の人・茉莉。
他の女性に恋をして結婚し、子供まで出来ても、
九の心の中にもいつも茉莉への思いが消えることなく残っていた。
九の一生は茉莉への思いであふれているというのに、
茉莉にとっての九は「幼なじみ」でしかない。
この決定的な温度差が悲しい。

それぞれの壮絶な50年・・・。でも物語の締めくくりは穏やか。
こんな生活がずっと続いてくれれば・・・と、
彼らの当たり前すぎて気付かないほどのささいな幸福を祈ってなりません。
| comments(0) | trackbacks(1) | 11:50 | category:    辻仁成 |
# アカシア
アカシア
アカシア
辻 仁成
アカシア/辻仁成
文藝春秋
1365円
評価
愛とはこんなにも、もろいものだったのか・・・。
恋の記憶が感傷に、出会いの輝きが紫煙にかすむ時、
二人は再びお互いの目を見つめ合う。
かけがえのないものを取り戻すまでの5つの物語+1。



(感想)
全体的に静かで落ち着いた雰囲気を持つ短編集+1
(この1が嬉しいおまけになっています)。

「歌どろぼう」が印象的でした。
生きることを放棄しているような人間が“歌を盗まれる”。
どういうことかというと、ある日突然歌うことムードができなくなってしまうのです。
この発想ってうまい!!
人生の光や希望を“歌”にあてはめているわけですよね。
ついつい“自分は歌を盗まれるような人生を送ってはいないか!?”と立ち止まって考えてしまいます。

「明日の約束」では
文明が介在されることで失われていくものの大きさを感じられます。
名前があり、個性や責任が生じることによって生まれてしまう余計なもの。
コンプレックス、プレッシャー、差別・・・
みんな神の子、自然に生かされ、自然に死んでいくだけのこと
こんな当たり前のことが当たり前じゃない今、
シンプルに生きたいな、と今の社会では到底無理なことに思いを馳せてしまいました
| comments(0) | trackbacks(0) | 11:38 | category:    辻仁成 |
# サヨナライツカ
サヨナライツカ
サヨナライツカ
辻 仁成
サヨナライツカ/辻仁成
世界文化社
1470円
評価 ☆☆☆
1975年、バンコク・・・。
皆に「好青年」と呼ばれる豊は謎の美女・沓子と出会い、
狂おしい性愛の日々に溺れていく。
豊の結婚式指輪が迫り、二人は別れを選択するが
25年後に運命のバンコクで再会し・・・。

(感想)
短時間壁掛時計でさらっと読める、美しくもはかないラブストーリーでしたニコニコ

面白いことは面白いです。
でも、描写の仕方に薄っぺらさを感じます。
明らかに作者の力量不足です下向き

なぜ二人がこれほどまでに惹かれあったのかが文章から伝わってきません。

豊は婚約者の光子に対して「愛はむやみに口にするものではない」と言ったけど、
その肝心な「愛」を描くのにまったく深みがない。
もっと、こう読者の胸をぐっと締め付けるようなものがほしかった。

これではきっとお互いの本質を知らないで、
美しい思い出しか残らないうちに別れてしまったから
25年たっても気持ちが色あせなかったのだな、と判断してしまいます。

この底の浅さ、
「マディソン郡の橋」にそっくりです。

●この本を好きな人におすすめなのは・・・
マディソン郡の橋/ロバート・ジェームズ ウォラー
愛人 ラマン/マルグリット・デュラス
| comments(0) | trackbacks(0) | 10:35 | category:    辻仁成 |
# 愛をください
愛をください
愛をください
辻 仁成
愛をください/辻仁成
マガジンハウス
1575円
評価 ☆☆☆☆☆
養護施設で成長し、自殺未遂を繰り返す十八歳の李理香の許に届いた一通の手紙メール
自らも同じ境遇だと明かす、
手紙の主・基次郎の素直な文面に李理香も心を開くようになるが、
意外な運命が二人を待ち受ける。
往復書簡が織り成す、至純な愛の物語ぴかぴか

(感想)
ぶっちゃけ私のいちばん好きな本です。

カバーが付いていることにより、余計「特別感」が増す、素敵な素敵な本。

李理香と基次郎の往復書簡だけで構成される本書。
基次郎は優しくしっかりと李理香に「生きること」を教えていく。
ふたりの手紙はいつしかまるで私自身に宛てられた手紙のように
私の心に侵食して、涙ポロリがとまりませんでした。

「生きること」「愛すること」「愛されること」
人生において最も意味を持つこの3点、
それに真剣にむき合わせてくれる本でした。

何年か前に菅野美穂さん主演のドラマ版テレビが放映されていましたが、
あれに比べるとこちらはかなりシンプル。
ドラマ版のように、李理香が歌手デビュー音楽したりなんてことはなく、
ドラマ版の無駄をすっきりとそぎ落としたかのようにまとまっています。

●この本が好きな人におすすめなのは・・・
錦繍/宮本輝
いつか、僕らの途中で/柴田友香
| comments(0) | trackbacks(0) | 00:41 | category:    辻仁成 |
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