# ムーンナイト・ダイバー
2016.11.01 Tuesday
JUGEMテーマ:小説全般
ムーンナイト・ダイバー / 天童荒太(文藝春秋)
評価 ☆☆☆☆
ダイビングのインストラクターをつとめる舟作は、
秘密の依頼者グループの命をうけて、
亡父の親友である文平とともに立入禁止の海域で引き揚げを行っていた。
… 311後のフクシマを舞台に、
鎮魂と生への祈りをこめた著者の新たな代表作誕生。
(感想)
あやしく神秘的な夜の海の底には、
あの震災で流された人々の思い出の詰まった品々が沈んでいて、
その宝物を探しだすために危険を承知しながらも立ち入り禁止の月夜の海へ潜るダイバーのお話。
震災をテーマにした作品に対してこの感想は不謹慎かもしれないけど、
とにかく「美しい」の一言に尽きます。
自然の力はあまりに大きく、ちっぽけな人間がどうにかできるものではない。
だからこそ潜って、自然の力をその体に感じるたびに、
舟作はまるで「生」を確認するかのように「性」におぼれる・・・・。
その衝動の生々しさはまさに生きることへの渇望なのだと思います。
どちらかというと「生き残った方へのメッセージ」とか、
「震災の現実を語り継がなければ・・・」というよりは、
「死者へ送るメッセージ」的な意味合いのある作品という印象です。