# 海うそ
2014.07.12 Saturday
海うそ / 梨木香歩(岩波書店)
評価 ☆☆☆
昭和の初め、人文地理学の研究者、秋野がやって来た南九州のとある島。
山がちなその島の自然に魅せられた彼は、踏査に打ち込む――。
歩き続けること、見つめ続けることによってしか姿を現さない真実がある。
著者渾身の書き下ろし小説。
南九州にある架空の島「遅島」が舞台。
自然・歴史・・・古くからあるもの。
それらをいかに壊さずに、
でも現代人にも無理のない形で残すにはどうしたらいいのか深く考えさせられました。
けど、失うということもある意味では必要なことなのかもしれない。
失われはしたが、かつてはそこに間違いなく存在した・・・・、
この事実にこそ意味があるのかもしれない。
これまで読んだ梨木さんの作品に比べると随分と硬派な印象。
特に秋野が島へ滞在してから50年後を描く最終章は、
これがあるのとないのとでは作品の重みがグッと変わってしまう。
最終章を読んで、やっと作品のテーマがわかった気がしました。
重苦しい印象で、はじめは最後まで読めるか不安もありましたが、
世界観に引き込まれ、あっという間に読み終えました。