隣り近所のココロ・読書編

本の虫・ともみの読書記録です。
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# 海うそ
評価:
梨木 香歩
岩波書店
¥ 1,620
(2014-04-10)

 海うそ / 梨木香歩(岩波書店)


 評価 ☆☆☆


昭和の初め、人文地理学の研究者、秋野がやって来た南九州のとある島。

山がちなその島の自然に魅せられた彼は、踏査に打ち込む――。

歩き続けること、見つめ続けることによってしか姿を現さない真実がある。

著者渾身の書き下ろし小説。


南九州にある架空の島「遅島」が舞台。


自然・歴史・・・古くからあるもの。

それらをいかに壊さずに、

でも現代人にも無理のない形で残すにはどうしたらいいのか深く考えさせられました。

けど、失うということもある意味では必要なことなのかもしれない。

失われはしたが、かつてはそこに間違いなく存在した・・・・、

この事実にこそ意味があるのかもしれない。


これまで読んだ梨木さんの作品に比べると随分と硬派な印象。

特に秋野が島へ滞在してから50年後を描く最終章は、

これがあるのとないのとでは作品の重みがグッと変わってしまう。

最終章を読んで、やっと作品のテーマがわかった気がしました。

重苦しい印象で、はじめは最後まで読めるか不安もありましたが、

世界観に引き込まれ、あっという間に読み終えました。

| comments(0) | trackbacks(0) | 00:55 | category:    梨木香歩 |
# 雪と珊瑚と
評価:
梨木 香歩
角川書店(角川グループパブリッシング)
¥ 1,575
(2012-04-28)

JUGEMテーマ:小説全般
 
 評価 ☆☆☆☆

最近、若い女の子を主人公にしたこういう小説、多いよね?
よしもとばななさんに然り、小川糸さんに然り。
ちょっと非現実的かなと思いつつも、物語の中に流れる空気は好きなので
すっかりこの世界に引き込まれてしまいました。
まぁ、あくまで「おとぎ話」ってことでww
自分がこんな風に生きたいな、と思えるそんな理想にあふれた世界観。

くららさんの言葉、貴行さんのビジネスの考え方、そして美知恵さんの率直な思い・・・
どれもストレートに響いてくる。
それらがすべて詰った、ぼんやりとした幸福を表すかのようなラストが素敵でした。

たま〜にちょっと路地を入ったところに、
古いけど手入れの行き届いたいい感じの民家を見つけることがあるでしょう?
ああいう家ってくららさんが住んでいそう!!
そんな想像をしながら知らない町を歩いてみたくなりました。
| comments(0) | trackbacks(0) | 16:16 | category:    梨木香歩 |
# f植物園の巣穴
評価:
梨木 香歩
朝日新聞出版
¥ 1,470
(2009-05-07)
コメント:雰囲気に酔える和風ファンタジー

JUGEMテーマ:小説全般
● f植物園の巣穴 / 梨木香歩
● 朝日新聞出版
● 1470円
● 評価 ☆☆☆
植物園に勤める私は歯痛に悩んでいる。
ある日、巣穴に落ちてしまうのだが、そこは異界だった。
前世は犬だった歯科医の家内、ナマズ神主・・・・。
人と動物が自然に語りあい、過去と現在が入り交じった世界で、
私はゆっくり記憶を掘り起こしてゆく。


(感想)

梨木さんの新刊、早くでないかな〜と待ってました
現実と幻想、過去と現在、人間と動物の世界・・・すべてが交錯し、どこが現実なのかわからなくなってしまう。
はっきりとしたストーリーのようなものはないので、のめりこんで読み進めるタイプの小説ではありません。
ほんとにずーっと不思議な空間を漂うような気分だった。
独特の世界観に酔える作品です。
「家守綺譚」に雰囲気が似ていますね。
でも、梨木さんの本を読んだことなくて、しかもなんの予備知識もなく読み始めると
もしかしたら読むのに苦労するかもしれません。

四季折々の日本の自然の美しさや、不可思議さがきれいに描かれているのは梨木さんの作品のすてきなところ。
今回も例外じゃなく美しいです。

漂うように読んでいたのに、最後の最後に素晴らしい事実が待ってます。
ずっと靄がかかっていた世界に光がまばゆく差してきたように、
とてつもなく大きなものが心にグワーっと襲ってきて鳥肌モノでした。
不思議な世界に迷い込み、私まで迷子になっちゃいそうだったけど、
最後の結末がぐっと手を差し伸べて現実に救い出してくれた・・・そんな気がしました。

んー、でも個人的には明確なストーリーがある作品が好きなので、
「りかさん」や「からくりからくさ」みたいな梨木さんの方がいいなぁ。
| comments(2) | trackbacks(1) | 12:13 | category:    梨木香歩 |
# りかさん
りかさん
りかさん
梨木 香歩
りかさん/梨木香歩
新潮文庫
500円
評価 ☆☆☆☆☆
リカちゃん人形が欲しいと頼んだようこに、
おばあちゃんから贈られたのは黒髪の市松人形で、名前が「りか」。
しかもこの人形、人と心を通わせる術を持っていたのだ。
やがてりかさんはようこにとってかけがえのない存在になっていく・・・。
成長したようことその仲間たちの
愛と憎しみと「母性」をめぐる書下ろし「ミケルの庭」併録。



(感想)
私にも子供時代、いつも一緒にいた大切なお人形がいました。
子供にとってそのような存在が
どのくらいかけがえのないものかわかっているだけに、
この本に描かれるような世界がどれほど素晴らしいことか
わかりすぎるほどわかりますウィンク

もう胸がいっぱいぴかぴかぴかぴか
なんて美しいっラブ
大切な大切な本読書に出会ってしまいましたニコニコ

ようこはりかさんとおばあちゃんによって、
人形との関わり方だけでなく、
人として、生あるすべてのものとどうやって共存していくべきなのかを学びます。

おばあちゃんは何かを真剣に見つめようとすると、
どうしても差別をしてしまうことがあるといいます。
それを避けることはできないけれど、
この差別には澄んだ差別と濁った差別があるのだそうです。
「自分の濁りを押し付けない。
それからどんな『差』や違いでも、なんてかわいいって思うのさ」
このことをおばあちゃんがようこに教える場面にはハッとさせられました。
生というものの平等を考えてみるきっかけとなりました

なお、ようこが大きくなり、
「ミケルの庭」に登場する同居人達と暮らし始めた頃を描いた作品が
「からくりからくさ」という本です。
ちょうど「りかさん」と「ミケルの庭」を繋ぐお話になっているので、
ぜひ読んでみてください。
こちらもとても素敵な作品です。



この本を好きな人におすすめなのは・・・
からくりからくさ/梨木香歩
| comments(0) | trackbacks(0) | 11:27 | category:    梨木香歩 |
# 沼地のある森を抜けて
沼地のある森を抜けて
沼地のある森を抜けて
梨木 香歩
沼地のある森を抜けて/梨木香歩
新潮社
1890円
評価 ☆☆☆☆
すべての始まりは「ぬか床」だった。
先祖伝来のぬか床が、呻くのだ。
変容し、増殖する命の連鎖。
連綿と息づく想い。
呪縛を解いて生き抜く力を伝える書下ろし長篇。



(感想)
ぬか床から人が生まれてくる・・・。
はじめはなんておかしな話だろうと思っていたけど、
だんだんとスケールが大きくなって、
いつのまにか生命の神秘を紐解くような壮大な物語になっていました。

細胞が死ぬほど願っているのは、ただ一つ、増殖

全宇宙ではじめにうまれたたった一つの細胞。
その細胞のすさまじいほどの孤独が、遺伝子に取り込まれて延々と伝わった。

この“圧倒的な孤独”が本当に“生命の起源”だとしたら・・・。

こんなことを私に考えさせてしまうこの作品のスケールの大きさには
ただただ脱帽ですびっくり

梨木さんらしいほのぼのとしたやわらかさに、
今回は遺伝子や科学の神秘が織り交ぜられ、
とっても斬新で深みのある作品に仕上がっています。
梨木ワールドの進化を感じました。
| comments(0) | trackbacks(0) | 11:07 | category:    梨木香歩 |
# からくりからくさ
からくりからくさ
からくりからくさ
梨木 香歩
からくりからくさ/梨木香歩
新潮文庫
620円
評価 ☆☆☆☆☆
祖母が遺した古い家家に女で私たちは共同生活を始めた。
糸を染め、機を織り、庭に生い茂る草よつばのクローバーが食卓にのる。
静かな、けれどたしかな実感に満ちて重ねられてゆく日々。
心を持つ不思議な人形「りかさん」を真ん中にして・・・。
生命の連なりを支える絆を、深く心に伝える物語。



(感想)
とても美しい小説

ラストでは悲しみや感動とは違う、
今まで味わったことのないような素敵な涙がこぼれましたポロリ
いい出会いをしたような気がします。

日本的な古い家で若い女性たちが共同生活をします。
染色の修行をする蓉子、
鍼灸の勉強中の外国人・マーガレット、
美大生で織物の研究をしている紀久と与希子。
そして、その家のもう一人の家族が古い人形のりかさん・・・。
この4人と1人が織り成す物語は感銘を受けることばかりでした。

野に咲く植物チューリップに自然に目を向けられる心の余裕と優しさ、
自分のアイデンティティーを受け入れ、先祖を重んじる心、
古くから伝わる手仕事の伝統を敬う心、
忘れたくない素敵な心に溢れている作品。
彼女達の生活スタイルは私の理想とする形にも近いことから、
より親近感を覚えたというのもあると思います。

この本を素敵だと思える気持ち、大切にしたいです


●この本を好きな人におすすめなのは・・・
りかさん/梨木香歩
| comments(4) | trackbacks(0) | 12:59 | category:    梨木香歩 |
# 西の魔女が死んだ
西の魔女が死んだ
西の魔女が死んだ
梨木 香歩
西の魔女が死んだ/梨木香歩
新潮文庫
420円
評価 ☆☆☆☆
学校に行けなくなった少女・まいは、
おばあちゃんの家おうちで一ヶ月間を過ごすことになる。
西の魔女ことおばあちゃんからまいが手ほどきを受ける「魔女修行」。
それは喜びも希望も幸福も、すべて自分で決めて掴み取るということだった――。


(感想)
「魔女修行」はまさに「人生修行」。

いちばん大切なのは意志を持つこと』。
なんでも自分で決める。そして決めたことはやり遂げる。
その力が強くなれば、
心に悪魔が寄り付いてくるような隙はなくなる――。


言葉で言うのは簡単だけど、
簡単そうなことが実は意外に難しいんですよねたらーっ

読み終えた時に日々の疲れが洗われるような、
忘れていたものに気付かされたような穏やかな気持ちになりましたニコニコ
生きていく上での「原点」「基本」を再確認できたような気がします。

この本に限らず、
梨本さんの小説にでてくるおばあちゃんはみんなとっても素敵ですラブ
梨本さんの理想像なのかモデルがいるのか非常に気になるところです。
梨木さんのおばあ様がこんな素敵な方だったのでしょうかニコニコ

●この本を好きな人におすすめなのは・・・
りかさん/梨木香歩
からくりからくさ/梨木香歩
王国シリーズ/よしもとばなな
| comments(0) | trackbacks(0) | 11:50 | category:    梨木香歩 |
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