隣り近所のココロ・読書編

本の虫・ともみの読書記録です。
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# すれ違う背中を
評価:
乃南 アサ
新潮社
¥ 1,470
(2010-04)
コメント:「いつか陽のあたる場所で」の続編です

JUGEMテーマ:小説全般
 ● すれ違う背中を / 乃南アサ
 ● 新潮社
 ● 1470円
 ● 評価 ☆☆☆☆☆
「過去」の背中に怯える芭子。
「堀の中」の体験をいまだ不用意に口走る綾香。
しかしやっと、第二の人生が見えてきた二人だった。
ムショ帰りコンビのシリーズ、大好評につき第二弾。
 


(感想)

「いつか陽のあたる場所で」の続編。
ムショ帰りの巴子と綾香が過去を隠しながらひっそりと人生をやり直す物語です。
綾香の方は前作から自分のパン屋を持ちたいと必死で修行していましたが、
今作ではついに巴子の方にも将来の光が見えてきます
前作までは後ろ向きでオドオドしてて、ちょっとイラッとさせられる存在だった巴子だけど、
人間、やりがいや自信を持つとこんなにも変わってくるものなんですね〜。

二人は二人で支えあうことができるから、生きていられる。
過去を背負ってはいるけれど、
かけがえのないパートナーと夢をを得た今、二人とも幸せではあるのかもしれない。
けど、家族とのこと、夢の実現、そしてこのまま誰にも過去を知られずに生きていけるのか・・・・と、
彼女たちの未来には心配がいっぱい。
彼女たちの夢は応援したい。
でも、事件をきっかけに距離を置くようになった家族(特に綾香の子供)の存在は無視していいものではない。
この問題、彼女たちはどうしていくのだろう?
これからもぜひ続けてほしいシリーズです。
| comments(2) | trackbacks(0) | 12:18 | category:    乃南アサ |
# ニサッタ、ニサッタ
評価:
乃南 アサ
講談社
¥ 1,785
(2009-10-21)
コメント:しっかりと生きたいのに、いつも何かが邪魔をする・・・主人公の感情がリアルにわかります。

JUGEMテーマ:小説全般 
 ● ニサッタ、ニサッタ / 乃南アサ
 ● 講談社
 ● 1785円
 ● 評価 ☆☆☆☆
最初の会社を勢いで辞め、二番目の会社はある日、出社するともぬけの殻になっていた。
気に入らない派遣先は次々にやめて、まあまあ居心地の良かったところもしくじって契約を切られる。
社会へ出てしっかり働きたいのに、なかなか定まらないまま数年が過ぎたけど、
まさかこの俺が住む場所さえなくすことになるなんて、思ってもみなかった。
失敗を許さない現代社会でいったん失った「明日」をもう一度取り返すまでの物語。



(感想)

タイトルにも使われている“ニサッタ”とは、アイヌ語で“明日”という意味。
主人の耕平は北海道の出身で、後半はアイヌなどの人種の問題も絡んでくるので、
アイヌ語のこのタイトルはすごくしっくりきます。

運が悪いというのもあるかもしれないけど、
主人公の耕平は嫌なことがあれば簡単に仕事を投げ出してしまう。
そんなことの繰り返しで蟻地獄にハマったかのようにどんどん堕ちていく生活。
悪気はないし、やる気だってないわけではない。
でも、今の社会って一度ハマってしまうとなかなか抜け出せないようにできているといっても過言でなくて、
ワーキングプアとかネット難民になってしまう人たちも、
おそらくこういう風に少しずつ少しずつ堕ちていってしまうのであろう現実がリアルに伝わってきます。

中盤までは救いがなく、読んでいて気が滅入るのですが、
耕平は同僚の杏奈が暴行されそうになったときに本気でキレる正義感を持つ男性であり、
働く意欲も完全に失っているわけではないのがわかるので、
きっといつか耕平が報われることを信じ、500ページの長編にもかかわらずスラスラ読めました。

そして、杏奈という女の子の存在が何ともいえないスパイスになっています。
この作品の裏側には耕平の物語以上に計り知れない深みをたたえた杏奈の物語がある。
それを思うとゾクゾクしちゃいますね。

【明日のことを考えることさえ大変な時は、とりあえず今日のことだけを考えて生きていればいい。】
耕平の祖母のこの言葉は耕平だけでなく、読者の心にも沁み入ります。
| comments(0) | trackbacks(0) | 11:52 | category:    乃南アサ |
# ウツボカズラの夢

評価:
乃南 アサ
双葉社
¥ 1,785
(2008-03-19)
コメント:ウツボカズラとはよく言ったもんだ・・・
JUGEMテーマ:小説全般
●ウツボカズラの夢/乃南アサ
●双葉社
●1785円
●評価 ☆☆☆
母が亡くなってすぐに父が女を家に連れ込んだ。
弟もその女になついてしまい、家庭に居場所を失った未芙由は
一度も会ったことのないおばの「ウチにおいでよ」という言葉を真に受けて東京にやってくる。
もともと壊れかかっていた鹿島田家だが、歯車はどんどん狂い始め・・・。
鹿島田家の人々の日常をシニカルに描ききることで見えてくる不気味な世界とは・・・。




(感想)
家に居場所がなくなり、東京の親戚を頼ってきた未芙由。
そこは高級住宅地のお屋敷だったが、家族はバラバラ。
そこで家事を任され、目立たないように邪魔にならないように静かに静かに生きてただジーッとチャンスを狙っている。
気付かないうちに人の隙間に入り込み、静かに静かにおびき寄せるのは・・・居場所と幸せ。

はじめは家族の物語なのかと思ってたけど、
タイトルの意味がわかり、物語の本質に気づいた瞬間、ゾッとしました。
ウツボカズラ・・・よく言ったものです。
本編の最後(408ページ)の主人公の決意には鳥肌が立つほど。
こういう不気味さって桐野夏生っぽいなー。

プロローグがうまく生かしきれてない印象だったけど、最後の最後のエピローグで納得。
最終的に誰も損してないからすごい。
読み始めた時の印象と話の展開がこんなにも違う作品も珍しい。

それでね、この本、スピン(しおりの紐)が2本ついてるんですよ
どんな意味があるんでしょうね??
個人的にはどっちの紐を使っているのかわからなくなって「あれ?あれ?」ってなったのですが
| comments(0) | trackbacks(0) | 10:02 | category:    乃南アサ |
# いつか陽のあたる場所で
いつか陽のあたる場所で
いつか陽のあたる場所で
乃南 アサ
JUGEMテーマ:小説全般

いつか陽のあたる場所で/乃南アサ
新潮社
1575円
評価 ☆☆☆☆
ご近所の噂話にビクビクし、警察官銃の姿を見てはドキリとする。
ワケあって下町で新生活を始めた芭子と綾香。
二人に降りかかる霧は、いつの日か晴れるのだろうか・・・。



(感想)
芭子と綾香には前科があり、二人は刑務所で知り合いました。
刑期を終え、下町でひっそりと暮らし、毎日のように家を行き来する仲。
自分の犯した罪のおかげで家族とも縁を切られたような状態になっているし、
過去を知られることが怖くてなかなか親しい人もできにくい。
だから二人は友人を超えた特別な存在。

二人とも贅沢もせず、まじめにひっそりと生きていて、
とても罪を犯した人のようには思えない。
だから読者は二人を応援するでしょう。
家族は連絡もよこさないし、
なんてかわいそうな二人とすら思ってしまう。

でも、芭子の肩を持たずに考えてみると、
家族が芭子を捨てたのではない。
まず最初に家族を捨てたのは、
残された家族の苦労も考えずに欲望のままに罪を犯した芭子なのだ。
芭子はそれに気づいてなかった。
すっかり芭子たちの味方になって読んでいた私も気づいてなかった。
それに気づいた時に愕然としました。
事件を犯し、刑務所に入るということは被害者と加害者だけの問題ではない。
家族を含め、周囲の人々の人生まで狂わせてしまう。
もし犯罪を犯してしまう瞬間に、
一瞬でも家族の顔が浮かんだら思いとどまる人はずいぶんといると思うんだけどなぁ。

刑期を終えたからといって、犯した罪がなかったことになるわけではない。
塀の中でどう過ごすかより、
刑期を終えて外の生活に戻ってからどう生きていくのか・・・。
本当の意味での償いはそこからの生き方にあるのだ。

いつも前向きで元気な綾香は40代だが
「いつか自分のパン屋パンを持つ」と夢という持って元気に頑張っている。
けど、それは彼女の強がりで、彼女だって人知れず苦労していた。
それを知った芭子が自分の生き方を考えていく姿にグッときました。
| comments(0) | trackbacks(0) | 10:03 | category:    乃南アサ |
# 行きつ戻りつ
行きつ戻りつ
行きつ戻りつ
乃南 アサ
行きつ戻りつ/乃南アサ
文化出版社
1575円
評価 ☆☆☆
それぞれに事情を抱えた妻たちは
何かを変えるために旅新幹線に出た・・・。
旅先の新鮮な風景と、
そこで出会った人々との語らいが彼女達の心を
解きほぐしていく。


(感想)
12編収録の短編集。
本文中の写真カメラは一枚を残してすべてが著者の手によるもの。
主人公たちが旅する土地の風土や自然描写も見事に表現されていて、
丁寧な取材が感じられます。

妻(大人の女)ならではの悩み、葛藤、嫉妬。
女なら誰もが理解できそうな感情ながら、
むやみに口にするのは憚られるようなやり場のない思い。

最後にはみんな心の重荷から開放され、
すがすがしい気持ちで帰路へたつ。
読後感が良い作品です。

ミステリーのイメージの強い乃南アサさんですが、
本作はそうではなく女性の内面にぐっと迫った内容。
心の醜さにまでも同性として共感できたけど、
どこか品のある作品でもありました。
| comments(0) | trackbacks(0) | 15:34 | category:    乃南アサ |
# 嗤う闇
嗤う闇
嗤う闇
乃南アサ
嗤う闇/乃南アサ
新潮社
1470円
評価 ☆☆☆
警視庁第三機動捜査隊から隅田川東署に異動したご存知、女刑事銃・音道貴子。
このたび、巡査部長に昇進いたしました拍手
バツイチ、34歳、ステディあり。
新天地の下町で、個性派の同僚たちに揉まれながら四つの奇妙な事件に挑む、
超人気短編シリーズ第三弾。

(感想)
超人気の音道貴子シリーズ嬉しい
短編では3作目になるのでしょうか。

機動捜査隊に所属していた貴子は巡査部長へ昇進し、
隅田川東署へ移動になりました。
その新しい職場で貴子が挑む4つの事件です。

4つの事件はどれも事件としての規模は小さく、
はじめは「なぜこれが音道シリーズである必要性があるのか?」と感じたのですが、
いずれの事件も、女性刑事が主人公であることによって
ぐっと重みが増す事件のような気がしますノーノー
母性や女心が皮肉にも裏目に出て、
事件へと発展していくケースが描かれていることによりそれを感じました。

まぁ、短編ということもあり、刑事モノにしては軽く読める作品ですウィンク
| comments(0) | trackbacks(0) | 10:49 | category:    乃南アサ |
# 涙
涙

乃南 アサ
涙/乃南アサ
幻冬舎

評価 ☆☆☆
昭和39年東京オリンピックジョギング前夜。
一方的な別離の電話電話を最後に、
挙式を翌日に控えた萄子の前から婚約者・勝が姿を消した。
刑事銃である勝にある凄惨な殺人事件の嫌疑がかけられ、
萄子は勝を探し出そうとするが・・・。

(感想)
一気に読ませるテンポのある作品ではありました。

しかし、タイトルの「涙」、この意味を考えてみる。
誰の「涙」なのか、誰のための「涙」なのかわからない・・・・あせあせ

少なくとも私は萄子のためには泣けない。
確かに彼女は不幸かもしれない。
でも、洋子やルミだってこれと同じ厚さの本に出来るほど不幸だった
(この言い方、すこしおかしいかもしれないけど)
なにも特別に萄子だけが不幸なわけではないと思うんですよね〜。

萄子がお嬢様王冠2で、働いてもいないのに勝を探すためにたくさんのお金を使って日本全国を駆け回るのをみると、
まだこの人はすべてを失ったわけではないと思えて仕方ない。
(単に私のお金持ちに対する嫉妬だろうかたらーっ

人一倍、正義感の強い刑事だった勝が
逃げなければいけない真実の理由がわかったときは、胸が痛くなったけど・・・。

●この本が好きな人におすすめなのは・・・
観覧車 恋愛ミステリー/柴田よしき
| comments(0) | trackbacks(0) | 10:49 | category:    乃南アサ |
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