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JUGEMテーマ:小説全般
● ゴリラ裁判の日 / 須藤古都離(講談社)
● 個人的な評価 ☆☆☆☆☆
カメルーンで生まれたニシローランドゴリラ、名前はローズ。
ローズは人間に匹敵する知能を持ち、言葉を理解する。
手話を使って人間と「会話」もできる。
運命に導かれ、ローズはアメリカの動物園で暮らすようになった。
動物園で出会ったゴリラと愛を育み、夫婦の関係にもなる。
順風満帆のはずだった――。
しかしその夫が、檻に侵入した4歳の人間の子どもを助けるためにという理由で、銃で殺されてしまう。
なぜ? どうして麻酔銃を使わなかったの?
人間の命を救うために、ゴリラは殺してもいいの?
だめだ、どうしても許せない!
ローズは、夫のために、自分のために、正義のために、人間に対して、裁判で闘いを挑む!
(感想)
本は好きだけど、
面白かった本について誰かに話したり、人にすすめたいとは思わない。
ここで自分の記録のために感想を書いていればそれでいい。
・・・そういうスタンスだった自分が久々に「誰かと語りあいたい!!」と思えた本でした。
人間並みの知能を持ち、手話を使って会話もできるゴリラ・・・
これだけ聞くとトンデモ小説かとおもっちゃいそうだけど、
実は奥が深く、メッセージ性の強い作品。
主人公のゴリラ・ローズへの感情移入もゴリラなのにたやすく、
まるでローズという一人の女性の生き様を見せられているかのように熱いものがあります。
この設定をフィクションとは思えないほどリアルに感じられるのがすごいのです。
昨年、「ヴィーガン革命」という本を読み、
同じ動物でありながら、犬猫は人間に寄り添い愛されて生きる一方で、
牛豚は食用として処分される不平等について考えさせられました。
今年の初めには羽田空港で飛行機事故があり、
ある女優さんが飛行機に搭乗する動物について発した意見が話題になったりもしました。
これらはあくまで「人間 と 動物」として考えさせられた出来事だったけれど、
この作品が私達に投げかける問題提起はその次元を超え、
動物が感情を持ち、会話もできる状況にありながら、
それでも人と動物は平等ではないのか?という話。
動物愛護だとか多様性社会どころの騒ぎじゃあありませんw
ダニエル弁護士の最終弁論の痛快さにしびれ、
ローズの発した言葉に涙が止まりませんでした。
こんな設定、今まで誰も考えられなかった。
一生記憶に残る大傑作です。