隣り近所のココロ・読書編

本の虫・ともみの読書記録です。
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# 淳子のてっぺん
評価:
唯川 恵
幻冬舎
¥ 1,836
(2017-09-07)

JUGEMテーマ:小説全般

 

 淳子のてっぺん / 唯川恵(幻冬舎)

 

 個人的な評価 ☆☆☆☆

 

2016年10月に逝去した登山家・田部井淳子。

男女差別が色濃い時代、

女性として世界で初めてエベレスト登頂に成功した彼女は、

どのように生き、どのように山に魅入られたのか―その物語を完全小説化。

山を愛し、家族を思い、人生を慈しんだ淳子が、

その“てっぺん”に至るまでの、辛く苦しくも、喜びと輝きに満ちた日々。

すべての女性の背中を優しく押してくれる、感動長篇。

 

 

 

(感想)

 

実在した登山家・田部井淳子さんの物語を小説化したものです。

唯川さんといえば恋愛小説が得意な印象なので、

今回はとても意外なジャンルを手掛けられたという気がします。

山の専門用語など私には難しい部分もあったのですが、

もともと唯川さんの文章は簡潔で読みやすいのが特徴でもあるので、

唯川さんの文章だから助けられた・読みこなせたとも感じています。

そして嫉妬や愛する人を思う切なさなど、

女性らしい感情がしっかり描かれているのも唯川さんだからこそと言えましょう。

 

女だてらに偉業を成し遂げた淳子さんはもちろん素晴らしいです。

でも、私はそれよりも旦那さんのサポート力・理解力に脱帽!

こんな旦那さん、いるんですか!?

どこまでがフィクションなんですか!?

旦那さんが妻の夢に協力する姿勢にただただ感動しました。

 

タイトルの「淳子のてっぺん」ですが、この「てっぺん」というのは

淳子さんが制覇したエベレストやアンナプルナなどの世界的に有名な山々のことではありません。

ここに淳子さんが人生で得たものの素晴らしさが詰まっています。

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# 今夜は心だけ抱いて

JUGEMテーマ:小説全般

 

 今夜は心だけ抱いて / 唯川恵(朝日新聞社)

 

 個人的な評価 ☆☆

 

17歳の女子高校生の娘と47歳のバツイチの母親がある日、

ビルのエレベータが急直下事故に巻き込まれ、ふたりの心は入れ替わってしまう。

……若いカラダと熟れたココロ、熟れたカラダと若いココロ、

さて女はどっちで恋を始めるのでしょう?

 

 

 

 

(感想)

 

2人の人間の心が入れ替ってしまうというお話は、

これまで数多く発表されてきたけど、

これは入れ替った10代と40代の母娘のそれぞれの恋愛と性に重きを置いた作品。

2人の親子関係や歩み寄りを丁寧に綴るのがテーマではありません。

女性心理を描くのが得意な唯川さんらしい「入れ替りもの」と言えるでしょうね。

 

しかし、この母親、気持ち悪かったな。

経験があるから我慢できないのかもしれないけど、

娘の肉体を大切にしてないように感じられるのがどうも不快でなりません。

性体験があるかどうかもわからない娘の体を預かっておいて、

吉岡さんや須加さんとああいうことをする母親がいますか?

これには思いっきり引きました。

この不快感が、私のこの作品への全体的な評価を思いっきり下げました。

一方で娘の方は、深尾さんと大人の恋を育んでいく。

両者の対象的な恋模様が面白かったです。

 

「大人たちは愛の言葉の代わりに、胸の奥にある引き出しを開け、

その中にしまい込んでいたものを少しずつ見せてゆくものらしい」 という一文は素敵だったなぁ。

この場面で深尾さんが話した子供時代のやんちゃなエピソードにも大人の女はキュンとする

恋のはじまりの淡い時間・・・この場面は何度も読み返してしまいました。

| comments(0) | trackbacks(0) | 11:22 | category:    唯川恵 |
# セシルのもくろみ

JUGEMテーマ:小説全般

 

 セシルのもくろみ / 唯川恵(光文社)

 

 評価 ☆☆☆

 

平凡な生活を送る専業主婦・宮地奈央の生活は一変した。

友人に誘われ軽い気持ちで応募した女性誌の読者モデル募集で思いがけず採用されたのだ。

華やかなファッションの世界に渦巻くモデルたちの様々な思惑に困惑しながらも、

奈央は“負けたくない”という自分の中の「女」に気付く―。

人気女性誌『STORY』の大好評連載、待望の文庫化。

 

 

(感想)

 

「STORY」に連載していた小説とは知らずに読み始め、

読んでる途中にそのことを知り「なるほどな〜」と納得。

もともと小説を読み慣れてない人向けに書いたのかな?

モデルとして、そして女として変化していく様があまりにとんとん拍子すぎて

軽い印象を受けました。

普通の主婦だった主人公が突然読者モデルという華やかな立場に立つことで生じる

周囲への影響や家族の心境などがあまりにも描かれていなすぎるし、

女同士の足の引っ張り合いとドロドロ加減もなんともSTORY世代の好みそうな感じですね。

 

ただたんに「仕事に就いた」というだけではなくて、

人前に出るモデルになったことで女であることや美しさと意識するようになり、

自信とプライドを持つようになった。

でも、それが彼女のほんとうの幸せなのかな?と思うと必ずしもそうとも言い切れないのに

同性として悩んでしまいます。

最後の最後の編集長との一件・・・・これさえなければ私も見方も違ったかもしれないけど。

なーんとなくスッキリしないラストでした。

| comments(0) | trackbacks(0) | 17:05 | category:    唯川恵 |
# 啼かない鳥は空に溺れる
JUGEMテーマ:小説全般

 啼かない鳥は空に溺れる / 唯川恵(幻冬舎)

 評価 ☆☆☆☆


愛人の援助を受けセレブ気取りで暮らす32歳の千遥は、
幼い頃から母の精神的虐待に痛めつけられてきた。
一方、中学生のとき父を亡くした27歳の亜沙子は、
母と二人助け合って暮らしてきた。
そんな二人はそれぞれ結婚を決めるが、
その結婚が、それぞれの“歪んだ”母娘関係をさらに暴走させていく。




(感想)

「母」と「娘」の関係をテーマにした作品です。
一方は、幼いころから母に精神的に虐げられてきたと思っている女性。
もう一方は、母子二人で支えあい、ずっと母と寄り添って生きてきた女性。
この二組の母子が「娘の結婚」という人生の大きな岐路に立った時に、
それまでの関係性をどう変えていくか・・・というお話でした。

母子の仲がうまくいっていた・そうではなかったの違いはありますが、
どちらも自分の意思を優先するよりも先に常に母親の顔色をうかがい、
母に人生を支配されてきたと思っている女性で、
母側も娘側も、良くも悪くも共依存の関係に陥ってるんじゃないかと思えます。
女同士ならではのねっとりした距離感がまるでサイコホラーのようでした。

親が子に干渉し、依存するのはよく考えれば当然のこと。
そこで、いい距離感を保ちながらも
自立していくということが「大人になる」ということなのかもしれない。
また、娘を時に冷静に突き放し、
客観的に見ることができるようになることが「子離れ」ということなのでしょう。

親子であれど、大人になったら「個人」としての関係を築く。
このことの重要さを感じました。
| comments(0) | trackbacks(0) | 01:14 | category:    唯川恵 |
# 手のひらの砂漠
評価:
唯川 恵
集英社
¥ 1,575
(2013-04-05)

JUGEMテーマ:小説全般

 手のひらの砂漠 / 唯川恵(集英社)

 評価 ☆☆☆☆


平凡だけど幸せな結婚のはずだった。
しかし、その先に待っていたのは思いもよらぬ夫の暴力。
シェルターからステップハウス、DV被害女性ばかりで運営される自然農園・・・。
離婚を経て少しずつ自立を果たそうと模索する可穂子だが、
元夫・雄二の執拗な追跡の手が迫ってくる・・・。 


いやー、さすが唯川恵さんです。
物語の世界に引き込まれ、ハラハラしながらも一気に読んでしまいました。
主人公の可穂子には決して落ち度があったわけではない。
なのに、ここまで追い詰められ、新しい希望が見えてきたかな?と思ったら
またすぐに踏みにじられ、何年も何年も苦しめられる。
私自身も可種子とともに終わりなき戦いに恐怖を覚えました。

こういうのってリアルの世界にもあるんだろうな。
こんなことにパワーを使うなら、
新しい恋愛とかもっと他のことを頑張れよって思うけどね。
でも結局、こういう人は同じことを繰り返すんだろうな。怖い怖い。

ここまで来ると自分を守るのは自分自身でしかないし、
大切なものを守れるのも自分でしかない。
後半で伊原さんと杏奈ちゃん親子と離れるという悲しい決断をし、
武術を身につけてその時に備えようとする可種子に胸が熱くなった。
最後には自分の生きる場所はここだと確信し、
納得する形で生きる場所を見つけた可種子だけど、
私としては本当は女性としての平凡だけどあたたかい生活を手に入れてほしかったです
| comments(0) | trackbacks(0) | 11:03 | category:    唯川恵 |
# 天に堕ちる
評価:
唯川 恵
小学館
¥ 1,470
(2009-09-28)
コメント:ブラックな恋の短編集

JUGEMテーマ:恋愛小説
 ● 天に堕ちる / 唯川恵
 ● 小学館
 ● 1470円
 ● 評価 ☆☆☆☆
出張ホストを買う孤独な女・りつ子。
クリーニング店で働く彼女がそんな費用をどうやって工面していたのか?
自殺願望のある風俗嬢・茉莉。
これまで彼女と付き合ってきた男たちはどうして彼女を捨てたのか?
八人の女と同居する中年男性に安らぎを求める加世子も、
アイドルのおっかけに夢中の奈々美も
みんな当たり前の、ささやかな幸せが欲しかっただけなのに・・・。
「幸福」にも「愛」にも、色んな貌がある。10人の女の天国と地獄の恋物語。



(感想)

物語にどっぷり浸るまでもなく、あっという間に1つの物語を読み終えてしまう短編集は
読みごたえがないからあまり好きではない。
でも、これは面白かったなー。
ある意味、イタい女の話ばっかりなんだけど、
唯川さんの作品とは思えないほどブラックな毒があり、意外性もあってゾクゾク。
読み終えて、その後の彼女たちはどうなるんだろうとふと考えた時の心地悪い余韻・・・。
こういう余韻を残せるってニクいよね〜。

「愛」も「幸福」も女の数だけ、それぞれの価値観でいろんな形がある。
タイトルの通り、主人公たちはみんな「堕ちて」いくんだけど、
「地」じゃなく、「天」に堕ちるだけあって、
彼女たちはそんな自分を完全に地獄に堕ちたとは思わないかも・・・。
だってほら、幸せにはいろんな形があるから・・・。

狂おしいほど誰かを愛したら、自分も道を踏み外しちゃうかもしれない。
あながち、ない話でもないのかも。 

特にインパクトがあったのは「光」「妙子」。
| comments(0) | trackbacks(0) | 17:24 | category:    唯川恵 |
# 瑠璃でもなく、玻璃でもなく

評価:
唯川恵
集英社
¥ 1,470
(2008-10-02)
コメント:「不倫している女」と「不倫されてる妻」
●瑠璃でもなく、玻璃でもなく /唯川恵
●集英社
●1470円
●評価 ☆☆☆
JUGEMテーマ:
恋愛小説
人には言えない秘密の恋をしている美月・26歳。
平凡な結婚生活に刺激が欲しくて逃げ道として仕事をはじめた英利子・34歳。
ひとりの男性を挟んで交錯する、ふたりの女の人生のゆくえ。



(感想)
女性なら誰もが思い当たる、無視できないテーマ。さすが唯川さん。
美月は朔也の不倫相手、そして英利子は朔也の妻。
それぞれの視点から交互に語られるスタイルで、
美月と朔也の恋の行方によって変化していく3人の運命を描きます。

女は自分の持っていないものを羨み、欲しがる生き物。
美月は今の恋人と幸せな結婚がしたい。
子供のいない主婦の英利子は母として、または職業人として自分を認めてくれる場所が欲しい。
結婚だって成功だって決してゴールではないのに、どうしても求めてしまう。
ひとつを手に入れたと思っても、欲しいものは次々と出てきて、その激しい欲望に終わりはなく、永遠に続く。
だから女性は男性に比べると年を取っても好奇心を失わず、いつまでも輝いてるのでしょうか(笑)


美月は妻のいる朔也を本気で求めた。
まわりにどう言われようと、奥さんと顔を合わせて戦うことになっても朔也が欲しかった。
それほどの強い思いを持っているのに、
でも、自分を好きだと言ってくれる「もう一人の彼」を都合よくキープしておきたいという気持ちはどうしてもわっかんないんだよな〜。
そのズルさがこそが本来の美月のような気もして、怖さも感じる。
男は女のこういう部分には気付かないものなんだよね。

もひとつ、納得いかないのは朔也と友章、二人の男性の描かれ方。
朔也は物わかりのいい男みたいだけど所詮は不倫をするような男。
友章だってどんな女にだっていい顔をする信頼のおけない男よ〜。
どちらもよく考えるととんでもない男なのに、いい男っぽく書かれてるのはどうかな〜

物語の最後の最後にそれぞれの5年後が記されている。
それは二人の未来がこのまま穏やかに行くわけではない波乱の予感も感じられます・・・。

装丁が素敵
パールのキラリとした輝きに一つずつラメが散りばめられてて、大人っぽく高級感がある。
唯川さんのファン層が好きな感じ
| comments(0) | trackbacks(0) | 13:47 | category:    唯川恵 |
# 一瞬でいい
一瞬でいい
一瞬でいい
唯川 恵
JUGEMテーマ:小説全般

一瞬でいい/唯川恵
毎日新聞社
1785円
評価 ☆☆☆☆
稀世と英次は軽井沢の、未来子と創介は東京の高校生学校
未来子と創介が子供の頃から毎年、
軽井沢の別荘に遊びに来るのをきっかけに親しくなり、夏をずっと一緒に過ごしている。
高校生活の記念に浅間山への登山を計画した4人だったが、
そこで起こった事故が4人の運命を変える・・・。
事故の重みを胸に秘め、大人へと成長してゆく彼ら。
著者が自らと同年生まれに設定した主人公たちの18歳から49歳までの
人生の軌跡を描く31年間のラブ・ストーリー。



(感想)
浅間山への登山の途中、英次が事故死。
恋に青春に、そして夢に一番輝いていた時期に起こったその悲劇は残された3人の人生に大きな影を落とします。
「もし自分があの時・・・」とやり場のない後悔を抱えて生きることになる3人。
この物語は残された3人の31年間を描きます。

贖罪・・・。
英次の死という同じ苦しみを抱え、
3人の中には恋なんて言葉では片づけられないほどのつながりを得る。

未来子と稀世の会話の中に
「楽しいことがあると、私にはその資格があるのかって後ろめたくなるの。
おいしいものを食べた時は、英次は食べられないのにって辛くなるの。」
という部分があった。
大切な人を亡くすと、楽しさや喜びさえも悲しみにつながる。
人生の喜びのすべてに対して後ろめたさを抱く。
私もこういう考え方をしてしまう性格なんだけど、
もし彼らが(そして私も)もっと前向きに、
亡くなった人の分まで幸せになることが自分の務めなのだと思えたら
もっと別の生き方ができたんじゃないかなと思います。

けど、3人の生き方、私は間違っているとは思わないし、むしろ好き。
最後は嫉妬も遠慮もなく、思うがままの選択をした3人はすがすがしい。
年を重ね、彼らの人生を変えた軽井沢で過去を思い出しながら
お酒ワイングラスが飲めるのだから
それだけで悪い人生ではなかったと言える。
年を取らないとわからないこと、選べないこともある。
年を重ねるのも悪くはないのかも猫2



●この本が好きな人におすすめなのは・・・
カシオペアの丘で/重松清

| comments(0) | trackbacks(0) | 10:50 | category:    唯川恵 |
# 恋せども、愛せども
恋せども、愛せども
恋せども、愛せども
唯川 恵
恋せども、愛せども/唯川恵
新潮社
1680円
評価 ☆☆☆☆
恋愛なんて、ある年齢になれば卒業できると思っていた。
けれど、やはりそうではないらしい。
いつだって、人は誰かを求め、恋を待っている…。
祖母、母、娘たち三世代のゆれ動く恋と仕事、結婚。
すべての世代の女性たちに贈る待望の恋愛長篇。


(感想)
血の繋がりはないけれど強い絆から家族となった4人の女達。
祖母、母、二人の娘の恋、仕事、結婚を娘達のエピソードを軸に描いていきます。

娘達の未熟さも、
母の大人だからできる割り切り方も、
祖母の覚悟も すべてに同性として共感できましたニコニコ

唯川さんってコテコテの恋愛小説を書く人ってイメージがあったけど、
今作は随分深いところまで描いていたと思います。
恋愛小説というよりは「女の人生論」。
そのせいか甘いだけの恋愛小説よりずっと良かった!
深みのある作家になったのですねぴかぴか

この本のお母さんやおばあちゃんみたいないい女になりたい!
全ての女性に爽快な元気と希望を与えてくれる本です。

●この本を好きな人におすすめなのは・・・
ひとがた流し/北村薫
女たちのジハード/篠田節子
思いわずらうことなく愉しく生きよ/江國香織
| comments(0) | trackbacks(0) | 11:41 | category:    唯川恵 |
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