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JUGEMテーマ:小説全般
● はーばーらいと / 吉本ばなな(晶文社)
● 個人的な評価 ☆☆☆☆☆
彼女を好きだったのかもしれない、と本気で思った。
でも、彼女はもうこの町にいない−。
信仰と自由、初恋と友情、訣別と回復。
淡々と歌うように生きるさまが誰かを救う、書き下ろし小説。
(感想)
宗教二世をテーマにしたお話。
宗教二世というと、少し前に実際に起こったある事件を思い出しますが、
一歩間違えればすごく怖い作品になりそうなこの題材で
社会派小説もなく、ラブストーリーでもなく、
あくまで人間同士の素直な心のやり取りを繊細に描く作品にしちゃうのはさすがばななさん。
何が起きても静謐で、ゾクッとするほど美しい文章も相変わらず。
世界を変えたり、救ったりする力は私にはない。
そんな大それたことを考えたこともない。
けど、自分の近くにいる誰かを助けたいという気持ちはある。
自分の大事な人の力になる・・・それをみんながしていけば、
おのずとみんなが救われて、幸せになれるのではないか。
小さなことが大きな力になることもある。
常日頃、私が考えていることがそのまんま小説になったような作品でした。
好きなように生きることは素晴らしいことだけれど、
それによって大切な誰かが不幸になるなら問題だ。
人は一人で生きているわけではないから難しい。
本編だけでも十分に心に沁みるものがあるのだけど、
あとがきを読んだらばななさんの書きたかったことがよりくっきりと理解出来ます。
あとがきの一行目に書かれていたことのは私も同感で、
世界を疑って見ることで気づけることはある。
誰かの意見じゃなく、自分の感覚で正しいと思えることを信じたいです。