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JUGEMテーマ:小説全般
● しろがねの葉 / 千早茜(新潮社)
● 個人的な評価 ☆☆☆☆
戦国末期、シルバーラッシュに沸く石見銀山。
天才山師・喜兵衛に拾われた少女ウメは、
銀山の知識と未知の鉱脈のありかを授けられ、女だてらに坑道で働き出す。
しかし徳川の支配強化により喜兵衛は生気を失い、
ウメは欲望と死の影渦巻く世界にひとり投げ出されて……。
生きることの官能を描き切った新境地にして渾身の大河長篇!
(感想)
千早茜さんの直木賞受賞作。
千早さんが歴史小説を書くとは意外で、新しい千早茜を見せてもらいました。
しかし、女の情念を力強く描くという部分では千早さんの得意な分野であり、
この作品で大きな賞を受賞したというのも納得。
ページ数はそう多くはありませんが、大長編を読んだような濃密さを感じられる力作です。
石見銀山で男性に負けぬと強く激しく生きた女性・ウメの物語。
私が苦手な歴史ものであり、序盤はかなり重厚な雰囲気なので
入り込むまでだいぶ時間がかかりましたが、
いつのまにか手が止まらなくなっていました。
ウメを取り巻く男たち、喜兵衛、隼人、龍、ヨキがそれぞれ魅力的。
ウメの喜兵衛、ウメと隼人、ウメと龍・・・
それぞれの愛の形は違えどすべて偽りのない愛。
特にウメと喜兵衛との間にあるものは恋愛でもなければ親子愛でもなく、
2人にしかわからない言葉にできない愛のカタチ。
多くを語らず、心の奥底もはっきりとは描かれなかった喜兵衛だけど、
彼の愛情が爆発した瞬間があったということがだいぶ後になってわかります。
それにはウメだけでなく、私の心も震えました。
以前、直木賞候補になった千早さんの「男友達」という作品も大好きで大好きで、
あれも言葉にできない男女の関係を描いたものでした。
今回の作品はもっとスケールの大きな女の人生を描く歴史ものだったけど、
根本にあるのはやはり「言葉にならない男と女の関係」。
私が強く惹かれるのも、やっぱりそこw
今作もまぎれもなく千早茜節の冴えわたる作品だったと言わざるを得ません。