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JUGEMテーマ:小説全般
● タイム・オブ・デス、デート・オブ・バース / 窪美澄(筑摩書房)
● 個人的な評価 ☆☆☆
とある団地で5歳上の姉・七海と暮らすみかげ。
父とは死別し、母は数年前に出て行ったきり。
家計を支える姉に心苦しさを覚えながらも、ぜんそく持ちで、
かつ高校でいじめに遭い定時制高校に通っていることもあり、
自分の無力さにうちひしがれている。
そんな彼女の前に団地警備員を名のる奇妙な老人・ぜんじろうが現れ、
みかげの日常が変わっていく――。
(感想)
つい最近、同じ著者の「夏日狂想」を読んだばかりなのでギャップに驚きました。
今まで何冊も読んできましたが、こんなに幅の広い作家さんだったとは・・・!
さて、今作「タイム・オブ・デス、デート・オブ・バース」は大人よりも
10代の若い人に読んでほしい作品ですね。
装丁もターゲットに合わせたもののようだし、
私らおばさんに向けた本ではないんでないかな〜(;'∀')
こんな装丁で軽い語り口なのでサクサクと読めてしまうのですが、
実はヘビーな内容です。
貧困・育児放棄・独居老人・老朽化した団地・在日・いじめ・・・
現代の日本が抱えるさまざまな問題が描かれています。
そんな過酷な環境の中でも擦れずにまっすぐに育っているみかげちゃんは
すごくいい子だと思う。
けど、その影で大変な部分をすべて一人で背負ってきた七海ちゃんを思うと切ない。
彼女には幸せになってほしい。
どんな状況でもグレたりせずにまっすぐ頑張っているから、いい友達ができる。
手を差し伸べてくれる人もいる。
やっぱ自分を見失わず、保つって大事。