隣り近所のココロ・読書編

本の虫・ともみの読書記録です。
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# 灯台からの響き / 宮本輝
評価:
価格: ¥ 2,090
ショップ: 楽天ブックス

JUGEMテーマ:小説全般

 

 ● 灯台からの響き / 宮本輝(集英社)

 

 ● 個人的な評価 ☆☆☆☆

 

父の代から続く中華そば店を営む康平は、

一緒に店を切り盛りしてきた妻を急病で失って、

長い間休業していた。

ある日、分厚い本の間から、妻宛ての古いはがきを見つける。

30年前の日付が記されたはがきには、海辺の地図らしい線画と数行の文章が添えられていた。

なぜ妻はこれを大事にとっていたのか、

そしてなぜ康平の蔵書に挟んでおいたのか。

妻の知られざる過去を探して、康平は旅に出る――。
市井の人々の姿を通じて、人生の尊さを伝える傑作長編。

 

 

 

(感想)

 

宮本輝さんはかなりのベテランで、

書いている小説はもう完全に時代遅れです。

でも、私は大好きなんですよね。

この人の小説の良さは年を重ねるにつれてわかるものなんだと思う。

心が洗われて、

シンプルに道徳的「人として」「心の在り方」を教えてくれます。

この人の作品を好きだと思える気持ち、

いつまでも大事にしていきたいです。

 

60間近のおじさんが灯台をめぐる旅をする・・・・、

お話としてはまぁかなり退屈です。

でも、特に何を成し遂げたわけでもない平凡な人の人生の中にも、

心の機微のようなものがあり、

それは他人がいいかげんに扱っていいものではない。

そういうことが描かれているのかな・・・・胸が熱くなりました。

自分だけの正義、軸、こういうものを大事に生きていきたい。

今のこういう時代だからこそ、改めて痛感いたしました。

 

・・・と、まぁ漠然とした感想なのですが、

宮本輝さんの作品ってそうなんですよねぇ。

ほんとうに心の在り方を教えてくれる。

読んで期待外れということのない作家さんです。

 

| comments(0) | - | 15:49 | category:    宮本輝 |
# 三千枚の金貨(上)(下)

JUGEMテーマ:小説全般

 

 三千枚の金貨(上)(下) / 宮本輝(光文社)

 

 個人的な評価 (上) ☆☆☆

        (下) ☆☆☆

 

新進文具メーカー役員の斉木光生は、

五年前に入院したとき、末期ガンの患者から不思議な話を聞かされた。

和歌山県の山にある桜の巨樹。その根元に三千枚の金貨を埋めたという。

「みつけたら、あんたにあげるよ」と言われた記憶が蘇り、

会社の仲間の宇都木、川岸の二人に話をするが、

別の怪しい男たちも金貨を探していることに気づく。

金貨は本当に存在するのか!?

四十代の男たちの、心躍る「人生の選択」。

生きることを実感する大作。

 

 

 

(感想)

 

この作品のあらすじを一言で言うとすると、

「桜の木の下に眠る金貨を探すお話」になっちゃうんだろうけど、

ほんとに重要なのはそこではない気がします。

「男はいくつになっても子供」

まさにそんな少年のような冒険心に突き動かされた中年男たち。

この経験によって、彼らがお金よりも大切なものを得ることは間違いなく、

お金やモノではなく、精神的な豊かさの価値を教えてくれる作品でした。

この結末に納得できない読者さんも多いと思いますが、

結論を焦らない大人ならではの余裕は素敵です。

彼らは少年の心を今も持ちながらも、

様々な経験を経ている分、やっぱりしっかり大人の男なんですよね〜。

その証拠に彼らを取り巻くキーワードを一つずつ見ていくと、

質のいい文房具・蕎麦・コーヒー・ゴルフ・骨董品・シルクロード一人旅・・・・・などなど

大人にならないとその本当の意味での良さがわからないようなものばかり!

物語はこれらを描く場面がやたらと多いので、話はなかなか進みません。

私も読んでるうちは「本筋と関係ないじゃん」と若干イライラもしました。

しかし読後に改めて考えてみると、いいものに触れる経験をして、

精神的な豊かさを磨いていく彼らの姿を描くのがこの作品の本当のテーマだということならば、

脱線が多いのも仕方ないのかなと納得です。

単純に「金貨探しの物語」と受け取るか、

「精神の豊かさを描く作品」と受け取るかで、評価は大いにわかれる作品だと思います。

 

| comments(0) | trackbacks(0) | 12:15 | category:    宮本輝 |
# 約束の冬(上)(下)

JUGEMテーマ:小説全般

 

 約束の冬(上)(下) / 宮本輝(文藝春秋)

 

 個人的な評価 (上)☆☆☆、(下)☆☆☆

 

その家の完成と同時期に父が亡くなった。

以後10年間住む者のなかった家に、留美子は母とともに戻ってきた。

税理士を目指し、努力しつづけてきた10年という歳月。

妻子ある男との恋に消耗した時間だったが、32歳になった留美子の元に、

10年前手渡されたものの忘れ去っていた、見知らぬ少年からのラブレターが再現した。

「10年後の12月5日、蜘蛛が空を飛ぶ場所であなたにプロポーズします」。

甘すぎないロマンチシズムが全編にただよう、著者渾身の長編小説。

 

 

 

(感想)

 

上下巻まとめての感想になります。

 

まず最初に10年前のラブレターを気持ち悪いと思ってしまったのと、

偶然が重なりすぎる点に違和感を覚えてしまい、

他の宮本輝作品ほどハマれませんでした。

けど、それぞれの人生に大切な「約束」があり、

その約束を守ろうと謙虚に生きる姿には胸を打たれます。

 

質のいい木材で作る家具・葉巻・高級和食店・・・

贅沢な趣味・時間の使い方が描かれているのもこの作品の肝。

人間関係にしても、趣味や物にしても、

様々な経験を経た来た大人でないとわからない味わいや深みってある。

その趣のようなものを、これらの描写を散りばめることでうまく表現してあります。

 

あとがきに「大人の幼児化」について書かれていますが、

たしかにそれは幼稚な大人の極みともいえる私でも感じてること。

そんななか、心の在り方であったり、品位であったり、

大人のあるべき姿を見せてくれた作品だったと思います。

| comments(0) | trackbacks(0) | 11:26 | category:    宮本輝 |
# 三十光年の星たち(上)(下)

JUGEMテーマ:小説全般

 

 十光年の星たち(上)(下) / 宮本輝(毎日新聞社)

 

 個人的な評価 (上) ☆☆☆☆☆

        (下) ☆☆☆☆☆

 

京都に住む三十歳の坪木仁志は、職を失い、

恋人に捨てられ、明日の生活もままならない。親に勘当され、

金貸しの佐伯平蔵から借りた八十万円の借金を返せるあてもない。

そんな坪木に佐伯はある提案をする。

それは、借金返済の代わりに坪木を車の運転手として雇い、

返済の滞る人びとのもとへ「取り立て」に出かけるというものだった…。

 

 

 

(感想)

 

上下巻あわせての感想になります。

 

宮本輝さんの作品で描かれるものは古臭いし、

道徳みたいで説教くさくとらえる人もいるかもしれません。

けど、「心の在り方」をじっくりと考えさせられます。

この、心の奥底に触れる感じがたまらなく好き!

私は人の心が丁寧に描かれた小説が本当に好きなんだな、と改めて感じました。

 

自分自身で考える「自分」というのは誰の中にもあって、

それに徹底してこだわるのが自分らしい生き方だと思うのも決して間違いではないけど、

仁志のように人に周囲によって導かれて、進むべき道筋が見えてくる人もいる。

大事なのは、人の言葉を素直に受け止める心の柔軟性で、

人に流されてみるのも案外悪くないものです。

人生において、「人との出会い」ほど大きなものもないのかもしれません。

 

若い人はもちろんだけど、

佐伯のように「人を育てる」世代・立場になってきている大人の人にも読んでほしい作品です。

| comments(0) | trackbacks(0) | 11:08 | category:    宮本輝 |
# 星宿海への道

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 星宿海への道 / 宮本輝(幻冬舎)

 

 個人的な評価 ☆☆☆☆☆

 

中国南西端の地より、燃え盛る炎を胸に男は姿を消した。

父の顔も知らぬ幼な子をかかえて生きる女と、

兄を追う弟のたぎる想い。

その愛しい生命の絆の再生を鮮烈に描いた巨編。

 

 

 

(感想)

 

引き込まれた!面白かった!いい読書時間を味わえました。

宮本輝さんの作品はいつも人の心の在り方をしっかり描いていて、

「まっとう」とか「正しい」とはどういうことかを考えさせられます。

文章も美しいし、

読むと心が洗われるよな感じがして大好きです。

 

雅人の奥底にある思いを言葉で表すのはすごく難しい。

けど、星宿海への強い憧れがあったからこそ、

雅人はその思いをよすがとして、

実母亡き後もまっすぐに生きれたのではないかと思います。

心に何かまっすぐしっかりとした軸のある人は強いんです。

 

結局、雅人は生きてるのか、千春・せつ親子はどうなるのか・・・

私はそこを作中で明らかにすることは特に重要ではないと思っています。

っていうか、はっきり書いたら野暮ってもんでしょ。

読者は雅人が生きて、二人の元へ帰ってくると信じてる。

それだけで十分なのではないでしょうか?

そんな余韻も心地よい作品でした。

| comments(0) | trackbacks(0) | 23:29 | category:    宮本輝 |
# 草花たちの静かな誓い

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 草花たちの静かな誓い / 宮本輝(集英社)

 

 評価 ☆☆☆☆

 

ロサンゼルス在住の叔母の突然の訃報。

甥の弦矢が駆けつけると、27年前に死んだはずの叔母の一人娘が、

実は死んだのではなく、当時からずっと行方不明なのだと知らされる。
なぜ叔母はそのことを長らく黙っていたのか。

娘はいまどこにいるのか。弦矢は謎を追い始める――。
生き別れた母子の運命を豊かに描き出す長編小説。

 

 

(感想)

 

ミステリーにカテゴライズされる作品なのだろうけど、

草花の清らかな美しさと、

アメリカ西海岸のリラックスした雰囲気が心地よく、

ドキドキするよりもゆったりとした気持ちで読める作品でした。

雰囲気がいいから、

本来は許しがたい行為をした人物もそこまでの悪人に思えない。

そのへんが宮本輝的配慮というか、らしさというか・・・ですね。

 

キクエさんの精神力の強さに圧倒されます。

母親としてその選択をしたことはもちろんなんだけど、

それ以降も一生、イアンの妻であるキクエ・オルコットとして

生き続けたということが、もう私なんかには想像もできない境地。

やっぱり宮本さんの作品って深い。

「人の心」たるものをしっかりと読ませてくれる作家です。

 

ニコの存在がハードボイルド感あってアメリカチックで素敵。

そしてキクエのスープも飲んでみたい。

本筋と違うささやかな部分にも惹かれるもののある作品でした。

| comments(0) | trackbacks(0) | 17:35 | category:    宮本輝 |
# 田園発、港行き自転車(上)(下)
JUGEMテーマ:小説全般

 田園発、港行き自転車(上)(下) / 宮本輝(集英社)

 評価 (上) ☆☆☆☆  
    (下) ☆☆☆☆


絵本作家として活躍する賀川真帆。
真帆の父は十五年前、「出張で九州に行く」と言い置いたまま、
富山で病死を遂げていた。
父はなぜ家族に内緒で、何のゆかりもないはずの富山へ向かったのか―。
長年のわだかまりを胸に、真帆は富山へ足を向ける。
富山・京都・東京、三都市の家族の運命が交錯する物語。



(感想)

我を忘れて引き込まれるような刺激はないけれど、
お話の進むテンポが遅いということもあり、時間をかけて少しずつ読みました。
どことなく古臭く、若い人にはピンと来ない作品かもしれませんが、
久々にどっぷり浸ったな〜という感じがします。
富山の景色の描写もとても美しく、真帆たちの旅した風景が目に浮かぶようです。

人の心の根本にある「優しさ」や「温かさ」を感じずにはいられません。
凛とした姿勢で生きる登場人物が多く、この人達のように生きたいと思った。
人を思いやる心自然と常に持ち、丁寧に、自分に正直に生きる・・・
そうすることがおのずと良い縁や絆を呼びよせるんですね。

「赤毛のアン」の件は宮本輝さんご自身に重なりますよね?w
先日読んだばかりの吉本ばななさんとの対談集「人生の道しるべ」にこのエピソードが載っていたのを思い出し、
思わずニヤッとしてしまいました。
| comments(0) | trackbacks(0) | 15:41 | category:    宮本輝 |
# 水のかたち
JUGEMテーマ:小説全般

 水のかたち(上)(下) / 宮本輝(集英社)

 評価 (上) ☆☆☆☆☆
    (下) ☆☆☆☆☆


東京下町に暮らす主婦・志乃子、50歳。
もうすぐ閉店する近所の喫茶店で、文机と朝鮮の手文庫、
そして薄茶茶碗という骨董品を女主人から貰い受ける。
調べてみるとその茶碗は、なんと三千万円は下らない貴重なものだった・・・。
予想もしなかった出会いから、人生の扉が大きく開きはじめる―。




(感想)

先日読んだ宮本輝さんと吉本ばななさんの対談集「人生の道しるべ」の中で、
何度か話の中に出てきていたので読んでみました。
いやー、素敵でした。「心が洗われる」という点でこの二人の作家は共通してるのかもしれません。

近所の喫茶店の店主からタダでもらった古い茶碗。
その価値を調べてみると3000万円の値打ちがあることがわかった。
どうやら店主はその価値を知らずに、気楽な気持ちで譲ってくれたらしい。
・・・さて、ここでどうするか?
周囲の人々は「店主との取引は終わったのだ。堂々と3000万をもらえばいい」という。
たしかに彼らの言うように、
元の持ち主に茶碗の真の価値を明かす義務はないのかもしれない。
その意見は正しい。
でも、主人公にとってそうすることは自分らしくなかった。
自分の生き方ではない。
道義の問題ではなく、
私の心の問題なのだと「心」を優先させようとする主人公がたまらなく好きです。
シンプルに「そういうのが嫌い、私らしくない」・・・・いい!!
人生で大きな何かを為したわけでもない平凡な主婦でも、
「自分はこうなんだ」という確固たる意志を持ち、
人一倍正直にまじめにバカ正直に生きている姿は、
何に劣るでもなく美しいと思いました。
この作品の幸福の連鎖を「現実にはありえないおとぎ話だ」と評価する人もいるのだろうけど、
こういう正直な生き方が素晴らしい「縁」や「絆」を運んでくるということに関しては本当だと思う。
私はやはり地道に生きる人が好きだと改めて実感しました。
私もそうありたいです。
| comments(0) | trackbacks(0) | 10:58 | category:    宮本輝 |
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