海賊とよばれた男 (上)(下) / 百田尚樹(講談社)
評価 (上) ☆☆☆☆ (下) ☆☆☆☆☆
1945年8月15日、
敗戦で全てを失った日本で一人の男が立ち上がった。
男の名は国岡鐡造。
出勤簿もなく、定年もない、異端の石油会社「国岡商店」の店主だ。
一代かけて築き上げた会社資産の殆どを失い、
借金を負いつつも、店員の一人も馘首せず、再起を図る。
石油を武器に世界との新たな戦いが始まる。
名前や社名は違うものの、石油会社「出光」の創業者のお話です。
歴史小説も経済小説も苦手な私ですが、
経済面などで理解に苦しむ部分が多いながらも夢中で一気に読んでしまいました。
これは人の魅力に引き付けられて読む小説であり、
内容が難しいわりにテンポがよく、読みやすいのもよかったのかもしれません。
歴史や経済のややこしさはどうでもいい!
とにかく店主の国岡鐡造の理念・決断力には胸が熱くなります。
しかし、彼の素晴らしさとは真逆に
“出る杭は打つ”的に彼の邪魔をする者や組織もあり、
そのへんのドキドキ感も作品を大いに盛り上げます。
店主は会社の利益よりも、
日本という国のこれからに照準を合わせた経営を展開している。
タイムカートなし、出勤簿なし、馘首なし、定年なしという会社で、
社員を“家族”として絶対的な信頼を持っている。
利益だけにとらわれない広い視野・そして信頼関係。
これに社員たちは惹かれ、この店主についていこうと思い、努力する。
上に立つ者次第で、下の者も伸びる。素晴らしい上下関係!
儲けよりも、この人のために頑張る・・・という気持ち。
これこそが会社という組織にとって最も重要なことなのかもしれない。
どこまでがフィクションなのかわからないけど、もはやそんなことはどうでもいい。
店主の人間力に感動!
「今後はなるべく出光でガソリンを詰めよう」・・・・、
私がそう思ってしまったのも当然でしょうw