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JUGEMテーマ:小説全般
● 本心 / 平野啓一郎(文藝春秋)
● 個人的な評価 ☆☆☆☆
舞台は「自由死」が合法化された近未来の日本。
最新技術を使い、生前そっくりの母を再生させた息子は、
「自由死」を望んだ母の<本心>を探ろうとする。
母の友人だった女性、かつて交際関係にあった老作家…。
それらの人たちから語られる、まったく知らなかった母のもう一つの顔。
さらには、母が自分に隠していた衝撃の事実を知る――。
(感想)
20数年先の未来を舞台にした作品です。
技術はかなり進歩してますが、人々の悩みは今とそれほど変わりはなく、
「心」「愛」「優しさ」など、
普遍的なものを描いているので物語の中へスーッと入っていけました。
主人公の心の機微を丁寧に描き、
未来的な派手な要素があるわりには静けさを感じる作品です。
私は以前、平野さんの「私とは何か」を読んで【分人主義】を知り、
生きるのが少し楽になりました。
誰にだっていろんな顔があるものです。
この主人公の母親にだって母親以外の顔がたくさんあって、
息子に言えない・知られたくないこともたくさんあったようです。
でも母の人生を紐解き、
母の死後の様々な経験によって成長した主人公を見たら、
知られたくなかったことを知られてしまったお母さんも報われると思うんですよね。
曖昧なままでいいことは曖昧なままにできて、
大人な考え方・行動ができるようになっていく主人公の姿はまぶしかったです。
格差に関しては何も解決されないまま終わっているのには少しもやもやしますが、
しみじみと味わい深い作品でした。
またいつかもう一度読みたいです。