隣り近所のココロ・読書編

本の虫・ともみの読書記録です。
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# 本心 / 平野啓一郎
評価:
価格: ¥ 1,980
ショップ: 楽天ブックス

JUGEMテーマ:小説全般

 

 ● 本心 / 平野啓一郎(文藝春秋)

 

 ● 個人的な評価 ☆☆☆☆

 

舞台は「自由死」が合法化された近未来の日本。

最新技術を使い、生前そっくりの母を再生させた息子は、

「自由死」を望んだ母の<本心>を探ろうとする。
母の友人だった女性、かつて交際関係にあった老作家…。

それらの人たちから語られる、まったく知らなかった母のもう一つの顔。
さらには、母が自分に隠していた衝撃の事実を知る――。

 

 

 

 

(感想)

 

20数年先の未来を舞台にした作品です。

技術はかなり進歩してますが、人々の悩みは今とそれほど変わりはなく、

「心」「愛」「優しさ」など、

普遍的なものを描いているので物語の中へスーッと入っていけました。

主人公の心の機微を丁寧に描き、

未来的な派手な要素があるわりには静けさを感じる作品です。

 

私は以前、平野さんの「私とは何か」を読んで【分人主義】を知り、

生きるのが少し楽になりました。

誰にだっていろんな顔があるものです。

この主人公の母親にだって母親以外の顔がたくさんあって、

息子に言えない・知られたくないこともたくさんあったようです。

でも母の人生を紐解き、

母の死後の様々な経験によって成長した主人公を見たら、

知られたくなかったことを知られてしまったお母さんも報われると思うんですよね。

曖昧なままでいいことは曖昧なままにできて、

大人な考え方・行動ができるようになっていく主人公の姿はまぶしかったです。

 

格差に関しては何も解決されないまま終わっているのには少しもやもやしますが、

しみじみと味わい深い作品でした。

またいつかもう一度読みたいです。

| comments(0) | - | 16:45 | category:    平野啓一郎 |
# ある男
評価:
平野 啓一郎
文藝春秋
¥ 1,728
(2018-09-28)

JUGEMテーマ:小説全般

 

 ある男 / 平野啓一朗(文藝春秋)

 

 個人的な評価 ☆☆☆☆

 

弁護士の城戸は、かつての依頼者である里枝から、「ある男」についての奇妙な相談を受ける。
宮崎に住んでいる里枝には、2歳の次男を脳腫瘍で失って、夫と別れた過去があった。

長男を引き取って14年ぶりに故郷に戻ったあと、

「大祐」と再婚して、新しく生まれた女の子と4人で幸せな家庭を築いていた。

ある日突然、「大祐」は、事故で命を落とす。

悲しみにうちひしがれた一家に「大祐」が全くの別人だったという衝撃の事実がもたらされる……。
里枝が頼れるのは、弁護士の城戸だけだった。
人はなぜ人を愛するのか。幼少期に深い傷を背負っても、人は愛にたどりつけるのか。
「大祐」の人生を探るうちに、過去を変えて生きる男たちの姿が浮かびあがる。
人間存在の根源と、この世界の真実に触れる文学作品。

 

 

 

(感想)

 

相変わらず平野さんの頭の良さが際立ち、ずっしりと重たい作品でしたが、

ミステリー的な要素もある分、わりとサクサクと読めました。

 

「殺人犯の息子」であるとか「在日三世」であるとかは、

その人を愛してしまえば関係ない!といいたいところだけど、

最初から知ってたらこの愛ははじまっていたかな・・・なんて考えてしまう自分がいます。

当人にしてみれば自分では選び取ったわけではない、けど逃れられない苦悩。

個人としてのその人を愛するってどういうことなんだろうと深く考えさせられます。

平野さんの「分人主義」にも通じるものがあるテーマでした。

 

大祐と美涼は再会してどんな話をしたんだろう。

城戸の妻に最後に降りかかったある疑惑は・・・。

そのへんをちゃんと描いていないのが「大人の小説」ですよね〜。

40代の大人の男女だからこそ、グレーなままぼかしておきたい関係ってあるある。

城戸が美涼に対してあえて鈍感な態度を貫いたのもそういうことだし、

美涼だってそれはわかってる。

その程度の「心の秘密」は既婚者でも、おじさんおばさんでも、許されるんじゃないかなぁ。

なーんて甘っちょろいこと考えてる私は彼らと同世代だったりするのですがw

| comments(0) | trackbacks(0) | 10:54 | category:    平野啓一郎 |
# マチネの終わりに
評価:
平野 啓一郎
毎日新聞出版
¥ 1,836
(2016-04-09)

JUGEMテーマ:小説全般

 

 マチネの終わりに / 平野啓一郎(毎日新聞出版)

 

 評価 ☆☆☆☆☆

 

出会った瞬間から強く惹かれ合った蒔野と洋子。しかし、洋子には婚約者がいた。
スランプに陥りもがく蒔野。人知れず体の不調に苦しむ洋子。
やがて、蒔野と洋子の間にすれ違いが生じ、ついに二人の関係は途絶えてしまうが……。
芥川賞作家が贈る、至高の恋愛小説。

 

 

 

(感想)

 

いや〜、大人の恋愛小説でした。

ストーリー自体は下手するとメロドラマになっちゃいそうなものなんだけど、

これを美しい文章と哲学的な観点から丁寧に描くことによって崇高な純愛物語にしてしまえるんだから

「さすが平野啓一郎さん!」とうならずにはいられない。

私は平野さんが「私とは何か」という親書で掲げた“分人”という考え方が大好きなのですが、

この作品の中でもこの考え方がしっかり活かされていたと思います。

 

プロのギタリストと海外で活躍するジャーナリストの恋愛小説といういかにも小説的な設定は、

読み始めはなんだかこっ恥ずかしいような気さえしていました。

でも「三谷さんメール事件」のあたりは近年稀にみる緊迫感だったし、

ケータイのある時代なのに、いやメールでつながる時代だからこそのすれ違いや誤解が重なり、

苦しくて苦しくて、こんなにのめり込んだ恋愛小説は久しぶりでした。

 

「未来は過去を変えてくれる」・・・・これは名言です。

2人だけでなく私自身も、

「あんなこともあったよね」と悲しい過去を笑い飛ばせるような素敵な未来を築けるかな?

これからの生き方次第ですべてを変えられる・・・そんな希望とあたたかい光に満ちたラストでした

 

 

 

| comments(0) | trackbacks(0) | 10:21 | category:    平野啓一郎 |
# 高瀬川
JUGEMテーマ:小説全般

 高瀬川 / 平野啓一郎(講談社)

 評価 ☆☆☆


小説家と女性誌編集者が過ごす、京都の一夜。
繊細な心理主義的方法で描き、現代の「性」を見つめる「高瀬川」。
亡くした実母の面影を慕う少年と不倫を続ける女性の人生が並列して進行し、
やがて1つに交錯する「氷塊」。
記憶と現実の世界の間(あわい)をたゆたう「清水」など、
斬新で美しい技法を駆使した短編4作。



(感想)

いやー、これは変わった試みの作品でした。
4つの物語からなる短編集なのですが、
あるお話は2段組みで並行的に描き、途中で交じり合い、
また別のお話では散文のようにページに単語を散りばめるようなスタイル。
どちらもこれまで見たことのない手法でした。

正直に言ってしまうと、ページに単語が散りばめられている「追憶」は、
私の頭では“なんのこっちゃ・・・?”です。
「清水」もあまりに短すぎて、物語に入り込む前に終わっちゃったかんじです。

平野啓一郎さんには小難しいイメージがあったけど、
残りの2つ、「高瀬川」と「氷塊」に関しては私でも難なく読めたと思います。
「高瀬川」は作家と女性編集者のホテルでの一夜を細かに描写した作品。
こと細かく書かれてはいますが、
書かれていることはわりとありがちでノーマルな男女のコト。
最後のペットボトルの件はあまりに突拍子がなく、一生忘れられそうにありませんww
「氷塊」の実験的スタイルは面白かったです。

平野啓一郎さん、思ってたより読みやすいかも。
今後、苦手意識持たずにチャレンジしてみます!
| comments(0) | trackbacks(0) | 17:12 | category:    平野啓一郎 |
# 透明な迷宮
評価:
平野 啓一郎
新潮社
¥ 1,620
(2014-06-30)

JUGEMテーマ:小説全般

透明な迷宮 / 平野啓一郎(新潮社)

評価 ☆☆☆


深夜のブダペストで富豪たちに衣服を奪われ、監禁されてしまった日本人の男女。
「ここで、見物人たちの目の前で、愛し合え──」
あの夜の屈辱を復 讐に変えるために、悲劇を共有し真に愛し合うようになった二人が彷徨い込んでしまった果てしない迷宮とは?
美しく官能的な悲劇を描く最新小説集。



平野啓一郎さんの長編はいくつか読んだけど、
短編集を読むのは初めてでした。

もう最初にいっておくけど、この本、感想書くの難しいです。

万人受けするようなタイプの作品ではありません。
難解だし、どのお話にも漂う孤独感が重苦しく、
独特の世界観なのでかなり読者を選ぶ作品だと思います。

うーん、なんというか「孤独」だけでなく、そこから来るジメジメとした不気味さ?
そういうものが読んでいる間、始終まとわりついてくる。
現実ではありえない話ばかりなのだけど、実は私のすぐ近くで正気やリアルからかけ離れて、
心がこんなところへ行ってしまってる人がいてもおかしくないような気もしないでもない。
その世界に迷い込んだら抜けられなくなるようなゾクゾクする感じもある。

特に印象深かったのは「消えた蜜蜂」です。
この静かな不可解さ、寂しさは長く記憶に残りそう。










 
| comments(0) | trackbacks(0) | 15:21 | category:    平野啓一郎 |
# ドーン
評価:
平野 啓一郎
講談社
¥ 920
(2012-05-15)

JUGEMテーマ:小説全般

 ドーン / 平野啓一郎(講談社文庫)

 評価 ☆☆☆



男女の問題・政治・近未来・・・・
詰め込み過ぎじゃないってくらいに複雑で中身の濃い作品でした。

難しすぎてちゃんと消化しきれてないような気持ち悪さが残る。
けど、これは作品ではなく、自分の幼さに原因があるのだから仕方ない。
明日人・今日子夫妻の問題など心の問題の部分はスラスラと読めるけど、
大統領選の部分に行くと一気にページをめくる手が重たくなりました。

要するに平野さんは
「分人主義」をうまく説明するような小説を書きたかったののでしょう。
でも、それにはこのスケールの大きさでは難しい。
SF要素なんかいりません。
もっと日常的な作品の方がそれは伝わるはず。
これではあまりに非日常的すぎて、
自分を「分人主義」という考え方にうまく置き換えられない。
分人主義に大いに共感している私としてはこれにはとても残念に感じました。

作品の内容とは関係ないけど、
約650ページもの作品をなぜ講談社さんは前後編の2冊で発売しなかったのか。
分厚すぎて読みにくいよ!!
 

| comments(0) | trackbacks(0) | 14:40 | category:    平野啓一郎 |
# 私とは何か 「個人」から「分人」へ
JUGEMテーマ:新書
 

 私とは何か 「個人」から「分人」へ / 平野啓一郎(講談社現代新書)

 評価 ☆☆☆☆☆



ここ最近で平野さんの小説を2冊読んでみたわけだけど、
この人の作品をより深く理解するためには、
どうしても平野さんの造語「分人」というものを理解する必要がある。
そのために手にしたのがこの本です。

「分人」とは、対人ごとに存在する様々な自分のこと。
恋人との自分・家族との自分・職場の同僚との自分・
高校の同級生との自分・大学の同級生との自分・・・
これらは必ずしも同じ自分ではないはず。
よく「本当の自分」などということを言う人がいるけれど、
たった一つの本当の自分なんて存在せず、
対人ごとに見せる複数の顔が、すべて「自分」であるという考え方です。

いや、これは目からウロコの発想。
この人、私と同じ年なんだけど、よくこんなこと考えついたな。
斬新とかまったく新しい考え方とかそういうわけじゃない。
要するに、発想の転換?気づかなかったことに気づかせてくれたようなそんな本です。
この考え方で自分を見つめれば、
いろんなことを素直に納得でき、気持ちが軽くなります。
難しくとらえていた人間関係がスーッとラクに思えてくるはずです。

自分は誰と一緒にいる時の分人が好きかーーー。
それをはっきりと自覚すれば、おのずと「なりたい自分」が見えてくる。
その分人を足場にして、生きる道を見つけていけばいい。なるほどです!
でもだからといって、1つの分人にだけ生きていけない。
複数の分人を生きることこそが精神のバランスをうまく保つらしい。
たとえば職場での人間関係に悩んでいるとしても、そこだけでクヨクヨ悩まずに、
家族や友人といる時はいつも笑っている明るい分人を大切にする。
それだけで仕事のストレスは大きく軽減されてしまう。

うーん、すごく面白かったわ〜。
これ知ってるだけで生きるのがラクになりそう。


 
| comments(0) | trackbacks(0) | 12:08 | category:    平野啓一郎 |
# かたちだけの愛
評価:
平野 啓一郎
中央公論新社
¥ 1,785
(2010-12-10)

JUGEMテーマ:小説全般

 かたちだけの愛 / 平野啓一郎(中央公論新社)

 評価 ☆☆☆



先日の「空白の満たしなさい」に続き、平野さんの作品を読むのは2作目。
どちらの作品にも共通して鍵となるのは平野さんの造語である“分人”という考え方。
やっぱりこの考え方が根本的にあるんですねぇ。

恋愛小説として、男女が惹かれあうドキドキ感がない。
話しを展開していく上で必要性があったから2人は惹かれあう?
そんな不自然な印象を受けた。
久美子さんの存在がいかにもな感じで違和感あるんですよね・・・。
ストーリーも退屈だったな。

もちろんネットでエイミー・マリンズさんのことも調べました。
美しく堂々としていて、とても魅力のある人!
彼女の義足もイメージしていたものよりずっと美しく洗練されたものだったし、
この本を読むならぜひ彼女の動画も見ることをお勧めします。
| comments(0) | trackbacks(0) | 10:14 | category:    平野啓一郎 |
# 空白を満たしなさい
評価:
平野 啓一郎
講談社
¥ 1,680
(2012-11-27)

JUGEMテーマ:小説全般


 空白を満たしなさい / 平野啓一郎

 評価 ☆☆☆☆




 
世界各地で死んだ人間がよみがえる「復生者」のニュースが報じられていた。
生き返った彼らを、家族は、職場は、受け入れるのか。
土屋徹生は36歳。3年前に自殺したサラリーマン、復生者の一人だ。
自分は、なぜ死んだのか?
自らの死の理由を追い求める中で、彼は人が生きる意味、死んでいく意味を知る―。
 
死んだ人がよみがえるなんてありえない設定ではあるんだけど、
決してSFチックなものではありません。
テーマは重いのにサクサクと読みやすく、あっという間に読み終えました。
生きることの意味を考えさせられ、久々に読書っていいな〜と感じられた作品。
読書ってこうあるべき!読書の醍醐味を感じました。

自分で自分を死に導いてしまう人が多い現代において、
平野さんの「分人」という考え方はとても興味深い。
自分の中でたまに起きるいいようのないもどかしさやイライラも、
この「分人」という考え方に置き換えれば腑に落ちる気がする。
自分の「分人」と向き合うことで救われることもありそうだ。
なんだかこの小説って、小説でありながら自己啓発本の役目も果たしてくれてます。
| comments(0) | trackbacks(0) | 16:07 | category:    平野啓一郎 |
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