隣り近所のココロ・読書編

本の虫・ともみの読書記録です。
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# みかづき
評価:
森 絵都
集英社
¥ 1,998
(2016-09-05)

JUGEMテーマ:小説全般

 

 みかづき / 森絵都(集英社)

 

 評価 ☆☆☆☆

 

昭和36年。

小学校用務員の大島吾郎は、

勉強を教えていた児童の母親・赤坂千明に誘われ、ともに学習塾を立ち上げる。

女手ひとつで娘を育てる千明と結婚し家族になった吾郎。

ベビーブームと経済成長を背景に塾も順調に成長してゆくが、

予期せぬ波瀾がふたりを襲い―。

山あり谷あり涙あり。昭和~平成の塾業界を舞台に、

三世代にわたって奮闘を続ける家族の感動巨編。

 

 

 

 

(感想)

 

昭和から平成にかけて塾経営に携わる家族を描く長編。

実話をもとに書かれた作品なのかな?と勘違いしちゃうようなリアリティがあり、

なんだか朝ドラっぽいお話でした。

 

戦時中の極端な教育の末に戦後〜高度経済成長期〜と時代は流れ、

現代は収入格差による貧困により教育にも格差が出てきている時代です。

その時代の流れがわかりやすく、

どの時代の教育の現実もリアルに描かれており、

児童文学の作家だった森さんがこんな作品を書くようになったことにただただ驚いています。

 

教育への姿勢を曲げないことと、経営して利益を得ること。

どちらの面でも妥協することなく成り立たせるのは並大抵のことではなく、

そこに塾生の保護者や文部省まで絡んでくるから大変。

「教育がテーマ」なんて聞くと堅苦しい小説なのかな?と思いがちですが、

最初から最後までハラハラドキドキで意外にもスイスイと読める作品でした。

| comments(0) | trackbacks(0) | 14:08 | category:    森絵都 |
# 漁師の愛人
評価:
森 絵都
文藝春秋
¥ 1,365
(2013-12-16)

 漁師の愛人 / 森絵都(文藝春秋)


 評価 ☆☆☆☆

 

不倫の恋の末、脱サラで漁師となった男と暮らす決意はしたものの、

「妻」から時折かかってくる長電話と、

身内意識の強い閉鎖的な村で敵意にみちたまなざしを向ける海の女たちに悩まされ、

閉塞に覆われた田舎の愛人生活を描く「漁師の愛人」。

東日本大震災から一か月足らず。

被災地だけでなく、東京でも小さいながらも変化する日々の様子を描く「あの日以降」。

「少年とプリン」「老人とアイロン」「ア・ラ・モード」の3編からなる“プリン3部作”を収録。



(感想)


プリン三部作はただただかわいかった。

こういうことに熱くなれる男性、好きです。

どれもとても短い作品なのだけど、出てくる男性が必ずプリンのことでキレるw

もしかしたらこれ、主人公の男性はみな同一人物なのかもしれない。


表題作の「漁師の愛人」。

隣人の顔すらわからない都会に住む人には理解しがたい世界かもしれない。

けど、田舎ではたしかにこういう意識が強く存在する。

プライバシーなんてないも同然。変わったことをしている人ははじかれる。

その中でも自分を見失わない春子さんはかっこよかった。

田舎って案外、こんなふうに外から来て違う目線でその土地を見た人間が、

地域のためになる様な大きな気付きをもたらすことがある。

そうなればコミュニティーの一員として受け入れられる。

自分が愛した男が生き生きと輝ける場所はここなのだもの、ふんばってほしいものです。


震災後の東京でルームシェアをして暮らす女性達を描いた「あの日以降」。

あの震災で被災者の方々はたしかに大変な思いをされたけど、

被害の少なかったところの人達もそれぞれに生活の変化はあったはず。

そこへ目をつけた震災小説ということではなかなか斬新だったと思います。

| comments(0) | trackbacks(1) | 09:57 | category:    森絵都 |
# この女
評価:
森 絵都
筑摩書房
¥ 1,575
(2011-05-11)

JUGEMテーマ:小説全般 
 ● この女 / 森絵都
 ● 筑摩書房
 ● 1557円
 ● 評価 ☆☆☆。

あんたのヒロイン、なかなかのタマやな---。
釜ケ崎で働く甲坂礼司はホテルチェーンのオーナー二谷啓太に、
妻をモデルに小説を書いてくれと頼まれる。
妻の結子は神戸・三宮のホテルに1人で住む、つかみ所のない女だった。


(感想)

久しぶりの森絵都作品ですが、
あまりにもこれまでのイメージと違う、ギラギラと生命力を感じさせるような作品なのに驚きました。
児童文学の作家だと思って読むと大変なことになりますよ(笑)

「この女」というタイトルといい、前半の流れといい、
結子が主人公なんだろうなと思ってたら、次第に礼司の物語になっていく。
だからあのプロローグが必要だったのか・・・と作品の組み立てのうまさも感じます。

このあと、阪神淡路大震災が起きることを読者は知っている。
だから一層、2人のオムライスのシーンは切なくて仕方がない。
この小説の続きには二人の幸せがある。震災になんてきっと巻き込まれてはいないはず。
そう信じたい気持でいっぱいです。
| comments(0) | trackbacks(0) | 21:52 | category:    森絵都 |
# 架空の球を追う
評価:
森 絵都
文藝春秋
¥ 1,400
(2009-01)
コメント:はずれなしの11編

JUGEMテーマ:小説全般
●架空の球を追う/森絵都
●文藝春秋
●1400円
●評価 ☆☆☆
ふとした光景から人生の可笑しさを巧妙にとらえる森絵都マジック。
たとえばドバイのホテルで、たとえばスーパーマーケットで、
たとえば草野球のグラウンドで、たとえばある街角で・・・・。
人生の機微をユーモラスに描きだすとっておきの11篇。




(感想)
本のタイトルになっている「架空の球を追う」なんて7ページしかないし、
11編すべて完成度は高く、はずれはないんだけど、その短さゆえに読んだ後の充実感は少ないです。
“もうちょっと読みたかった”という思いがどうしてもつきまといます。
だから評価の星はあえて低くして3つ。

生活のなかでのちょっとした瞬間を切り取った短編集。
その瞬間のチョイスが素晴らしくうまい!
女性ならではの視点と観点で、感じるものが多かったなぁ。

なかでも秀逸なのは「パパイヤと五家宝」。
高級スーパーマーケットへ非日常のファンタジーを求めにやってきた主人公。
2000円の高級マンゴーをなんの躊躇もせずにかごの中に入れる優雅マダムが目に止まり、
彼女がかごの中に入れるものとまったく同じものを自分もどんどん入れていく。
自分が本当に食べたいと思う食品を見つけて我に返ったのだけど、
最後のレジの会計の時に・・・・サイコーです

このお話に限らず、「ドバイ@建設中」も「二人姉妹」も「架空の球を追う」もラストの落とし方がうまい。
なのに・・・もったいない。
こんな短い短編じゃなく、しっかりじっくり長編で読みたかったよ〜。

なぜだか知らないけれど、本についてるしおりがすごーく短かった
使いにくい・・・なんの意味があるのだろうか?
| comments(0) | trackbacks(0) | 12:12 | category:    森絵都 |
# ラン
ラン
ラン
森 絵都
JUGEMテーマ:小説全般

ラン/森絵都
理論社
1785円
評価 ☆☆☆☆
13歳で両親と弟を亡くし、20歳で奈々美おばさんを亡くし、
そして22の年にこよみが死んだ。
どうして私の私では死が幅をきかせているのだろう。
途方もない喪失感を抱えて生きる私を変えたのは、
一台の自転車自転車との出会い・・・。
越えたくて、会いたくて、
私は苦しみながらも走ることジョギングに決めた。



(感想)
かけがえのない家族を亡くした経験があり、
その悲しみから逃れることのできない人にはぜひ読んでほしいです。

「死ぬ」ってどういうことなんだろう?どうなることなんだろう?と、
私はずっと考えている。
この本の『死んだ人はファーストステージで前世の垢を落とし、
悲しい過去や憎しみと溶かし、きれいな思い出ばかりを残す。
けど、やがてそれすらも溶かしてセカンドステージへと昇っていく。』
という設定は
死ぬことの意味を考えていた私が人から聞いたり読んだりして、
教えられた死後の世界の話と共通する点が多く、
なんだかこれがまったくの作り話とは思えないんですよねぇ。

残された人がどう生きているかによって、
死んだ人がうまく前に進めないような状態になってしまうのであれば、
それは一生懸命生きる大きな理由になる。
残された者はは必死で生きなければならない。
それは最高の供養にもなるんだ!
大切な人を失った経験を自分の中で負にし、
うまく生きられない理由にしてしまったら死んだ人に申し訳ない。
いままで、そんな当たり前のことにも気付かなかった。
「体力をつけなければ・・・。辛いことを受けとめるために。」
そう思って必死に走る主人公の思いに胸が熱くなりました。
私も、強くならないと!!

この本に会えてよかった。
前向きに生きる力を与えてくれる本でした。頑張りますウィンク
| comments(0) | trackbacks(0) | 11:35 | category:    森絵都 |
# いつかパラソルの下で
いつかパラソルの下で
いつかパラソルの下で
森 絵都
いつかパラソルの下で/森絵都
角川書店
1470円
評価 ☆☆☆☆
柏原野々は雑貨店で働く28歳の独身女性。
厳格な父の教育に嫌気がさし、成人を機に家を飛び出したジョギング
そんな父も死に49日の法要を迎えようとしていた頃、
生前父と関係があったという女性から連絡が入る……。



(感想)
「永遠の出口」の瑞々しさが大好きで、
森絵都さんの次の作品を読むのを楽しみにしていました。

性に関する問題も大きく扱い、
児童文学を書いてきた森さんの“挑戦”を感じる作品でした。

父と子の確執。
自分のルーツを探す旅。
テーマとしては新しくはないです。
けど、目をそらしてきた(そらしたい)問題に真正面からぶつかって
大人になっていく、
それは成長過程としては永遠のテーマ。

父と子、母と子、兄弟、姉妹・・・
この関係だけはたとえ仲が悪くなってしまったとしても
絶対に否定することはできない“血”で繋がっている。
そのかけがえのなさを改めて感じました。

「いつかパラソル小雨の下で」
このタイトルの気持ちの良さは、
この本を読んだ人でなければわからないすがすがしさがありますぴかぴか
| comments(0) | trackbacks(0) | 10:29 | category:    森絵都 |
# 屋久島ジュウソウ
屋久島ジュウソウ
屋久島ジュウソウ
森 絵都
屋久島ジュウソウ/森絵都
集英社
1575円
評価 ☆☆☆
みんなで楽しくグループ旅行をするつもりで訪れた屋久島。
しかし屋久島をのんびり旅できるはずはない――
私はそのハードさにまだ気付いていなかった...。
森絵都初の旅エッセイ集。


(感想)
前半は屋久島の旅行記、
後半は文芸誌で連載していた旅行エッセイを収録。

こんなタイトル付けたわりに、世界自然遺産である島を訪れ、
森さんがどう魅了されたかはまったく伝わってきませんたらーっ
どうやらそれが主題じゃないんですね〜。
それよりは山登り富士山の過酷さや食おにぎりのことがメイン...
屋久島というテーマに興味のあった私には残念な内容でしたあせあせ

てか、そもそもワイワイ楽しみたいグループ旅行に
屋久島を選ぶ感覚からして違うんじゃない!?
森さん、どうしちゃったのよ・・・。
よく考えようよ・・・(呆)

5人のメンバーが食べた物ケーキや飲んだ物ワイングラス
コーヒー1杯まで丁寧に執拗に記録されてあります。
この執拗ともいえるこだわりって女ならではですよね!?
この点においてはかなり好きわーい
それぞれの食べた物から個性がはっきり感じられ、人物像が浮かぶ(笑)
かなり面白い試みでした。

●この本を好きな人におすすめなのは・・・
癒しの森 ひかりのあめふるしま 屋久島/田口ランディ
| comments(0) | trackbacks(0) | 11:42 | category:    森絵都 |
# 風に舞いあがるビニールシート
風に舞いあがるビニールシート
風に舞いあがるビニールシート
森 絵都

風に舞いあがるビニールシート/森絵都
文藝春秋
1470円
評価 ☆☆☆☆
国連で難民事業に携わる私に届いた悲しい知らせ・・・
元夫がアフガンで少女を助けるために命を落としたという。
大切な何かを抱えて懸命に生きる人々の短編集。

(感想)
森絵都さんの直木賞受賞作です王冠2

ある者は難民救済。
ある者は草野球ベースボール

6人の主人公達は 他人から見ればちっぽけにしか見えないかもしれないけど、
かけがえのない大切なものを持っている。
それに対して、それぞれ譲れない確固としたプライドも持っている。

他人がその重みの大小を決めることはできない。
その重さは本人だけが決める。
その価値は自分にしかわからなくても、
お金よりも大事なものを持っている人の強みを見せ付けられました。

個人的には私と同性であり、日常を感じさせる
「器を探して」「犬犬の散歩」の二人の女性に最も感情移入できました。

それにしても森絵都さん、
どんどん一般文学らしいテーマを描くようになってますねぴかぴか
個人的には「永遠の出口」くらいの瑞々しさがあった方が好みなのですが、
間口の広い作家になっていくのが手に取るようにわかるので、
これからも楽しみです。


| comments(2) | trackbacks(0) | 14:12 | category:    森絵都 |
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