# フラミンゴの家
2008.10.15 Wednesday
JUGEMテーマ:小説全般
●フラミンゴの家/伊藤たかみ●文藝春秋
●1400円
●評価 ☆☆☆
町の下半身と言われる南口の商店街で、
パチンコ屋とスナックを経営する母を手伝い、
実家のスナックを手伝う元(今も?)ヤンキーのバツイチ男・正人。
元妻にガンが見つかり入院したため、
離婚以来6年も会っていなかった思春期の娘の晶を預かることになったが、
晶は父親に捨てられたと思いこんでいるためになかなか親子の距離は縮まらず・・・
困惑しつつも絆を深めていく家族の物語
(感想)
いい年をして田舎ヤンキー上がりまるだしの主人公・正人。
リーゼントでバッチリ決めて、改造シーマを乗り回している事実を晶に知られたくなくて、
必死に隠そうとするのだがすぐに見破られてしまう。
一方の晶は父親に捨てられたと思いこんで生きてきた都会っ子。
もしこのまま母が亡くなってしまったら母の実家へ行くか、母の恋人のところへ行くか、
それともこの父親のところへ・・・。
もしもの時を思い、晶は必死で正人の人間性を見極めようとする。
正人が商売をする町は「町の下半身」と呼ばれ、子供を育てるには決して良いとはいえない町。
こんな町でなんだかいかがわしい商売をする大人たちの中に放り込まれた晶だが、
だからといって彼らが汚れているというわけではない。
義理人情に厚く、責任感があり、あやしいけどきちんと生きている人たち。
家族の問題にしても商売にしても真剣な彼らは何も恥じるようなところはなく、
その人の環境によって、人間性が図れるわけはない。
なかでもいいのが正人の今の恋人のあや子。
彼女がいたから、正人と晶は歩み寄ることができた。
ちょいデブでも、いい女はいい女
子供ができたからといって、誰もがすぐに親になれるわけではない。
子供と接していろんな経験値を増やしていくことによって、一歩一歩、親になっていくもの。
一組の親子が出来ていく過程を見るような作品でした。
はじめは頑なに正人を「片瀬さん」と呼んでいた晶が、
最後には自然と「パパ」と呼べるようになっていることがすべてを表しています。