隣り近所のココロ・読書編

本の虫・ともみの読書記録です。
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# 蠕動で渉れ、汚泥の川を

JUGEMテーマ:小説全般

 

 蠕動で渉れ、汚泥の川を / 西村賢太(集英社)

 

 評価 ☆☆☆☆☆

 

白衣を着てコック帽をかぶった北町貫多は、

はじめての飲食店でのアルバイトにひそかな期待を抱いていた。

日払いから月払いへ、そしてまっとうな生活へと己を変えて、ついでに恋人も…。

労働、肉欲、そして文学への思い。

善だの悪だのを超越した貫多17歳の“生きるため”の行状記!!

 

 

 

(感想)

 

貫多・・・いくら若さ故に何も知らず、世の中をなめまくってると言ったって、

こんなのが自分の周囲にいたら、不快でならないほどのゲスである。

しかも、これが私小説だっていうんだから凄すぎる。

 

でも、ここまでのクソ野郎なのに貫多憎めないのはなぜなんだろうな。

もはや馬鹿を超えた馬鹿だからなのかなぁとも思ったけど、

やっぱり何より西村賢太の文章のうまさ、これに尽きるのではないでしょうか。

言葉のチョイスがサイコーにうまくて、不愉快さも笑いに変えちゃう。

貫多がブタ女房に真正面から本音を言い放った場面は

これ以上ないほどスカッとしました。

数々の蛮行も若いからできちゃうんだろうけど、

できれば貫多には心の成長はせず、いつまでもゲスなままで、

私達を爆笑させてほしいものであります。

 

道徳観なし、人(特にレディーたち)には決してお薦めできないけど私は大好きです。

| comments(0) | trackbacks(0) | 11:22 | category:    西村賢太 |
# コンビニ人間
評価:
村田 沙耶香
文藝春秋
¥ 1,103
(2016-07-27)

JUGEMテーマ:小説全般

 

 コンビニ人間 / 村田沙耶香(文藝春秋)

 

 評価 ☆☆☆☆

 

36歳未婚女性、古倉恵子。

大学卒業後も就職せず、コンビニのバイトは18年目。

これまで彼氏なし。日々食べるのはコンビニ食。

夢の中でもコンビニのレジを打ち、

清潔なコンビニの風景と「いらっしゃいませ!」の掛け声が毎日の安らかな眠りをもたらしてくれる。

ある日、婚活目的の新入り男性、白羽がやってきて、

そんなコンビニ的生き方は恥ずかしいと突きつけられるが…。

「普通」とは何か?現代の実存を軽やかに問う衝撃作。第155回芥川賞受賞。

 

 

 

(感想)

 

「普通」とはなんなのか、それになんの意味があるのかを考えさせられました。

ちょっと変わった人のお話ではありますが、

異質なものに対して過度に不寛容になり、排除しようとするあたりは

今の世の中のリアルをうまく描いている作品です。

 

最終的に「主人公を理解してくれる男性に出会って普通の幸せを手に入れた」とか、

「病気が治って前向きに人生を歩み始める」とかそういう結末じゃないところが

この物語の肝だと思います。

それぞれの生き方、それぞれの幸せ・・・・で、いいんだよってことですよね?

 

最後に。

コンビニという場所はあんな狭い空間ながらも、

現代社会におけるあらゆるサービスが集約しているすごい場所です。

レジや商品補充だけでなく、仕事の内容は多岐に渡り、覚えなきゃいけないことも多いはず。

絶対に底辺と馬鹿にされるような職種ではありません。

主人公にとって、コンビニで働くことが何よりの幸せであり天職であり、

もはや「人間である以上にコンビニ店員である」とすら感じているのだから、

その生き方になにも恥じることはない。

それよりも「普通」に拘り、柔軟な感覚で物事を受け入れられない人の方がよっぽど悲しいのでは?

せめて自分は、自分の価値観を人に押し付けて、

その人を苦しませたり悩ませたりすることは絶対しない人間でありたいと思いました。

| comments(0) | trackbacks(0) | 15:13 | category:    村田沙耶香 |
# 下北沢について
評価:
吉本 ばなな
幻冬舎
¥ 1,499
(2016-09-23)

JUGEMテーマ:エッセイ

 

 下北沢について / 吉本ばなな(幻冬舎)

 

 評価 ☆☆


思い出の地・下北沢に住むことになった著者が、

そこで出会った人やお店を通して見つけた、幸せな生き方とは。

試練の時にこそ効く、19の癒しのエッセイ。

 

 

 

(感想)

 

下北沢に土地勘のある人は楽しめるのでしょうけど、

私は下北沢は行ったこともなければ知識もないので、

置いてけぼり感といいますか、始終距離を感じながら読みました。

しかも私は「街」や「家」に対する思い入れはまったく感じたことがないので、

そのいった感情も理解しにくいです。

でも、都会はご近所との人間関係が希薄なイメージがあったけど、

濃密で温かい関係を築いている人達もいることを知り、ほっこりしました。

特にトータス松本さんご一家とのエピソードがいいです。

 

ばななさんの小説は大好きなのですが、

今回の本に限らず、エッセイとなると自分との常識や価値観の違いに戸惑うことが多いです。

運転のアルバイトをお願いしている友人が大雪の中をチェーンなしで乗り切った運転技術を

ばななさんは生涯忘れないと書いています。

でも私は運転の仕事を任されているのに、

雪道をそんなタイヤで走行するその人は非常識以外の何物でもないと思うし、

夜中に子供を飲食店に連れて行くのも居合わせた人の迷惑を考えない非常識な行為だと思います。

うーん、私が堅物すぎるのでしょうか?

何事ももう少し自由にラフに考えることができたなら、

日常のなかでのささやかな「楽しい」や「嬉しい」も増えるのかな?

もう少しゆるゆるっといきたいですね!

| comments(0) | trackbacks(0) | 14:26 | category:    よしもとばなな |
# 西村賢太対話集
評価:
西村 賢太
新潮社
¥ 1,620
(2012-04)

JUGEMテーマ:読書

 

 西村賢太対話集 / 西村賢太(新潮社)

 

 評価 ☆☆☆☆

 

私小説への偏愛。創作の舞台裏。女性観。慊い生き方について―。

『苦役列車』での芥川賞受賞から一年、

先達に心情を吐露した貴重な対話9篇を収録。

 

 

 

(感想)

 

対談者の顔ぶれは町田康、島田雅彦と朝吹真理子、高橋三千綱、坪内祐三、

石原慎太郎、朝吹真理子、上原善広、坪内祐三に高田文夫となかなかの人選。

西村さんは無頼なイメージがあるけど、

コミュニケーション能力は意外に高いのかなという印象を持ちました。

でも当然、西村さんの面白さをうまく引き出せる相手と、

殺しちゃう相手というのははっきりあるようでw

町田康・石原慎太郎さんとの対談が特に気が合いそうでノリノリで面白く、

逆に西村さんとは同業者という以外にはまったく共通点なさそうな島田さん・朝吹さんとの対談は

本来の西村さんを出してない感じを受けました。

 

西村さんの言葉選びのセンス、好きだなぁ。

「慊りない」って言葉、私もどんどん使っていこうっ!

| comments(0) | trackbacks(0) | 16:06 | category: アンソロジー、競作 |
# トコとミコ
評価:
山口 恵以子
文藝春秋
¥ 1,836
(2016-11-21)

JUGEMテーマ:小説全般

 

 トコとミコ / 山口恵以子(文藝春秋)

 

 評価 ☆☆☆☆

 

名門、六苑伯爵家の令嬢・燈子と、使用人の娘、美桜子。

数奇な運命にもてあそばれつつも互いを思いやり、時に憎みながら、

激動の昭和、平成を強くしたたかに生き抜いた二人の女性の生涯を描く。

6歳から96歳まで歴史に翻弄された、

人のヒロインの運命を描く大河ロマン。

 

 

 

(感想)

 

昭和から平成までを生きた伯爵令嬢と使用人の娘の6~96歳までの物語。

名門家の煌びやかな生活、戦争、バズル期・・・激動の時代を生き抜く二人の女性。

お嬢様だったトコちゃまはたおやかで優美で、自分が動かなくても自然と人や運を引き寄せる。

一方、使用人の娘だったミコは自分の手でどんどん運命を切り開く。

どちらも女性もそれぞれに魅力的です。

女性が好きそうなストーリーだし、

朝ドラとかでダブル主演で、しっかりとドラマ化してくれないかな〜。

長い長い人生を描いているわりに約250ページとさほど長い小説ではなく、

でも急ぎ足すぎて描ききれてないものがあると感じるわけでもなく、

コンパクトな中にギユギュと面白みが凝縮されています。

 

「三つ子の魂百まで」という言葉があるけど、まさにその通り。

平成の世になり、

世の中どころか本人達ですら令嬢だの家柄だのなんてことに拘らなくなってからも、

トコちゃま一族のその部分に誰よりもこだわっていたのがミコであったことが切ない。

女手一つで事業を興し、トコちゃま一家の生活を支え、

もはやトコちゃま一家のすべてを握っているのはミコといっても過言ではないのに、

それでもやっぱり根っこは「トコちゃま家の使用人の娘」なのだなぁ・・・。

だけど「女の友情」「令嬢と使用人」「嫉妬」という関係性だけでない

言葉にはできない深いものがこの2人の間にはあったのだと思います。

 

物語を彩る重要なアイテムであるおそろいの牛首紬の着物。

時代とともにそれはコートとなり、コースターとなり形を変えていく友情の証。

いつまでも大事に使うその心がたまらなく素敵です。

しかも実はモノがいい方の牛首紬を持っていたのはミコの方だったってのが泣けました。

| comments(0) | trackbacks(0) | 15:34 | category:    山口恵以子 |
# 私が失敗した理由は
評価:
真梨 幸子
講談社
¥ 1,620
(2016-07-20)

JUGEMテーマ:小説全般

 

 私が失敗した理由は / 真梨幸子(講談社)

 

 評価 ☆☆☆

 

落合美緒は、順風満帆な人生から一転、鬱々とした生活を送っていた。

ある日、パート先の同僚のイチハラが、大量殺人事件を起こしたと聞く。

美緒が彼女とコンビニで会った夜に事件を起こしたらしい。

イチハラが言っていた言葉「…成功したかったら、失敗するなってこと。…」

その言葉に導かれるようにあることを思いつく美緒・・・

失敗の種類は人それぞれ、結婚、家族、会社―様々な人間の失敗談から導き出される真理。

美緒は一体何を思いついたのか、そして事件の真相は?

 

 

(感想)

 

作品の中で自分自身や過去の作品を自虐的にイジるセンスや、

言葉の選び方の感覚が若い作家っぽいなと思ったけど、意外や意外。

1964年生まれの方なんですね。

作家さん自身が楽しんで、ノリノリで書いてるのが伝わる作品でした。

 

初読みの作家さんだし、タイトルから連想していたのは短編集。

人の失敗からなんらかの教訓を得る・・みたいな作品をイメージしてたけど、

まさかの長編で、学ぶものも特になく、やたらと人が死にまくるミステリーでしたw

なんだか面白い角度から攻められた印象ですw

 

頻繁に出てくる「ときめき」という言葉に心をくすぐられます。

その選択が危険とわかってても、ときめきを感じることって多くって、

それを承知で「えいっ!」って選びとることが、

結果的に人生をより輝かせるなんてこともあるからなぁ・・・。

うーん、自分のときめきを信じて進めるまっすぐさが欲しいな〜。

| comments(0) | trackbacks(0) | 10:33 | category: 作家名 ま行 |
# すみなれたからだで
評価:
窪美澄
河出書房新社
¥ 1,512
(2016-10-17)

JUGEMテーマ:小説全般

 

 すみなれたからだで / 窪美澄(河出書房新社)

 

 評価 ☆☆☆

 

焼夷弾が降り注ぐ戦中の東京で真智子が過ごした峻烈なる一夜、

沈みゆく昭和末に文が養父から教えられた喜び……

時代を超え、生きることに通底する痛みと輝きを凝視する短篇集。

 

 

 

(感想)

 

8編からなる短編集。

「性」と「生」を生々しく描いていて、人ってなんて欲深き生き物なのかと痛感。

貪欲に求めた何かがあることによって、

人は人間として重みや深みを増していくのだな〜。

 

そういう意味で「朧月夜のスーヴェニア」は女性としてグッと胸に刺さります。

認知症の祖母と、それを介護する孫娘。

どちらが女として勝っているかなんて考えたこともなかった。

結果的に結ばれなくても、ほんのひと時でも

狂うおしいほど求められる刺激的な激しい恋をできた、

この経験だけで女は一生生きていける気がする。

ああー、私、「死んでもいい・・・」なんて思ったことない。

薄っぺらい恋と経験しかしたことないってことだろうな。突き刺さるわ・・・。

| comments(0) | trackbacks(0) | 11:46 | category:    窪美澄 |
# 幸せのプチ 町の名は琥珀
評価:
朱川 湊人
日本経済新聞出版社
¥ 1,836
(2016-11-09)

JUGEMテーマ:小説全般

 

 幸せのプチ 町の名は琥珀 / 朱川湊人(日本経済新聞出版社)

 

 評価 ☆☆☆☆

 

都電が走るこの下町には白い野良犬の「妖精」がいる・・・・。
銭湯の煙突が目立つ迷路のような路地は生活感が溢れ、地味なくせに騒々しい。

口が悪くて、おせっかいな人たちが暮らす町に、

ちょっぴり不思議で、ささやかな奇跡が起きる時……。

 

 

(感想)

 

下町の「琥珀」という町を舞台に描く様々な人間模様。

それぞれが独立したお話でありながらも、人情の厚い下町という土地柄もあって、

人々の生活はどこかでつながっている。

そして、彼らをそっと見守るかのように存在する白い犬・・・・。

現代では野良犬なんてめったに見なくなったけど、たしかに私が子供のころはいた。

もう野良犬という存在自体がノスタルジーを誘うものになっていることに気付き驚愕。

そんな懐かしさと、人の優しさにほっこりできる作品集でした。

まさに「THE 朱川湊人」な雰囲気です。

 

どのお話も後味がよくて、気持ちのいい読書ができたけど、

特に好きなのは「タマゴ小町とコロッケ・ジェーン」。

やはり私も女ですから、タマゴ小町には大いに共感できました。

| comments(0) | trackbacks(0) | 10:28 | category:    朱川湊人 |
# 草花たちの静かな誓い

JUGEMテーマ:小説全般

 

 草花たちの静かな誓い / 宮本輝(集英社)

 

 評価 ☆☆☆☆

 

ロサンゼルス在住の叔母の突然の訃報。

甥の弦矢が駆けつけると、27年前に死んだはずの叔母の一人娘が、

実は死んだのではなく、当時からずっと行方不明なのだと知らされる。
なぜ叔母はそのことを長らく黙っていたのか。

娘はいまどこにいるのか。弦矢は謎を追い始める――。
生き別れた母子の運命を豊かに描き出す長編小説。

 

 

(感想)

 

ミステリーにカテゴライズされる作品なのだろうけど、

草花の清らかな美しさと、

アメリカ西海岸のリラックスした雰囲気が心地よく、

ドキドキするよりもゆったりとした気持ちで読める作品でした。

雰囲気がいいから、

本来は許しがたい行為をした人物もそこまでの悪人に思えない。

そのへんが宮本輝的配慮というか、らしさというか・・・ですね。

 

キクエさんの精神力の強さに圧倒されます。

母親としてその選択をしたことはもちろんなんだけど、

それ以降も一生、イアンの妻であるキクエ・オルコットとして

生き続けたということが、もう私なんかには想像もできない境地。

やっぱり宮本さんの作品って深い。

「人の心」たるものをしっかりと読ませてくれる作家です。

 

ニコの存在がハードボイルド感あってアメリカチックで素敵。

そしてキクエのスープも飲んでみたい。

本筋と違うささやかな部分にも惹かれるもののある作品でした。

| comments(0) | trackbacks(0) | 17:35 | category:    宮本輝 |
# 何者(再読)
評価:
朝井 リョウ
新潮社
¥ 637
(2015-06-26)

JUGEMテーマ:小説全般

 

 

 何者 / 朝井リョウ(新潮社)

 

 評価 ☆☆☆☆☆

 

就職活動を目前に控えた拓人は、同居人・光太郎の引退ライブに足を運んだ。

光太郎と別れた瑞月も来ると知っていたから――。

瑞月の留学仲間・理香が拓人たちと同じアパートに住んでいるとわかり、

理香と同棲中の隆良を交えた5人は就活対策として集まるようになる。

だが、SNSや面接で発する言葉の奥に見え隠れする

本音や自意識が、彼らの関係を次第に変えて……。直木賞受賞作。

 

 

 

(感想)

 

少し前にこの本のアナーザーストーリー集「何様」を読んだので、

記憶を甦選らせる意味も込めて2013年に読んだものを再読。

当時は☆3つであまり高い評価をしていなかったんだけど、

改めて読んでみたらめっちゃ面白い!!

作品への評価が違えば、当時のブログに書いてあることにも納得いかず、

もう一度レビューを書きなおすことにします。

普段は再読しても感想はあまり変わらないので、

レビューの書きなおしなんてしないんですけどねっw

 

「演じなきゃいけない」、今の若者。

就活にしたって等身大の自分でぶつかったら内定なんて取れっこないし、

いかに用意周到準備して、嘘ついて、演じられるかに合否はかかってる。

それに対する皮肉も込められた作品なんじゃないかなぁ。

 

以前読んだ時は、彼らのことを滑稽に思ったんです。

でも、今回は違う。

もう、そうしないと生きていけない時代なんだな・・・。

最後に理香がぶちまけるシーンなんか理香も拓斗も痛々しくて、

この時代に生きている若い人をかわいそうにすら思います。

 

SNSやネットの普及によって居場所を見つけた人もいる一方で、

常に監視されて居心地の悪い思いをすることも多々ある時代です。

便利になれば、また新たな問題も出てくるから困りもの・・・。

朝井リョウさんはやっぱりこの時代ならではの違和感を描くのが抜群にうまい。

| comments(0) | trackbacks(0) | 11:55 | category:    朝井リョウ |
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